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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


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記者会見の攻防

総統官邸。

農業機械の開発について、緊急記者会見が開かれていた。

国内外から多くの記者が集まる中、ベレは演台へ立つ。


「それでは、ご質問をどうぞ」


一人の外国人記者が勢いよく立ち上がった。


「総統!ランス国とルギー国から抗議が来ています。開発中の農業機械は、戦車ではないのですか?」


ベレは落ち着いた表情で答える。


「いいえ。あれは農業機械です」


記者はさらに問い掛ける。


「ですが、戦車ですよね?」


ベレは首を傾げた。


「一つ、お聞きします。貴方は、その農業機械を実際に見たことがありますか?」


記者は少し口ごもる。


「……ありません」


「では、貴方の考える戦車の定義を教えてください」


「荒地を走行でき、大砲や機関銃などを搭載した車両です」


ベレは静かに頷いた。


「ありがとうございます。では、その農業機械に大砲は付いていますか?」


「……付いていません」


「機関銃は?」


「……ありません」


「では、貴方の定義では戦車ではありませんね」


会場から小さな笑いが起きる。

しかし記者は食い下がった。


「ですが!」


「後から武装を付ければ戦車になりますよね!」


ベレは苦笑した。


「それを言うなら、トラックに大砲を積めば戦車ですか?」


記者は首を振る。


「いえ、それは軍用車両です」


「では、戦車ではありませんね」


会場から再び笑いが起こる。

記者は言葉に詰まった。

ベレは静かに話題を変える。


「ところで、ランス国政府はラジオで共和国へ謝罪しましたね。ですが、正式な外交ルートでの謝罪は、まだ頂いておりません」


記者は慌てる。


「い、いや……今はその話では……」


ベレは真っ直ぐ記者を見つめた。


「その話ですよ。そもそも、ルー地方を占領したのはどこの政府でしたか?」


会場は静まり返る。


「人道支援物資を運んでいた青十字を攻撃したのは、どこの軍でしたか?」


記者は何も答えられない。

ベレは続ける。


「私たちは前政権から引き継いだ賠償金について、外交ルートで相談したいと何度もお願いしました。支払いを拒否した訳ではありません」


「しかし返ってきた答えは、話し合いではなくルー地方の占領でした」


「外交より先に軍を動かしたのは、共和国ではありません」


会場の記者たちは黙ってメモを取り続ける。

ベレは最後に静かに言った。


「共和国は農業機械を作っています。国民の生活を豊かにするためです。もし、それを戦車だと疑うのであれば」


「まずは、自国政府が約束した正式な謝罪と外交上の責任を果たしてから、共和国へ質問されてはいかがでしょうか」


会場は静まり返った。

誰一人、反論する者はいなかった。

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