帰還
ルー地方。
共和国軍は静かに街へ入っていく。
住民たちは家の窓から、その様子を不安そうに見つめていた。
「共和国軍だ……」
「本当に来たのか……」
誰も歓声を上げない。
戦争になると思っていたからだ。
その時だった。
共和国軍前線司令官が部下へ命じる。
「第一班!食料配給を開始!」
「第二班!医療班を展開!」
「第三班!青十字と合流し、負傷者の救護に当たれ!」
「第四班!治安維持に当たれ!住民への危害は絶対に許すな!」
「はっ!」
兵士たちは武器を構えるのではなく、荷馬車から食料や医薬品を降ろし始めた。
子どもへ、パンを渡す兵士。
老人を支える衛生兵。
青十字の職員と共に負傷者を運ぶ兵士たち。
その光景を見た一人の女性が涙を流した。
「戦いに来たんじゃ……ないの?」
隣にいた老人も静かに頷く。
「共和国は……」
「本当に迎えに来てくれたんだ」
「ラジオで言っていた通りだ……」
街のあちこちで涙を流す住民の姿があった。
その頃。
ルー地方郊外では、ランス軍の武装解除が始まっていた。
共和国軍の監督の下、兵士たちは小銃や拳銃を一丁ずつ積み上げていく。
機関銃。迫撃砲。野砲。弾薬箱。軍用車両。
次々と共和国軍へ引き渡されていく。
共和国軍前線司令官は静かに命じた。
「武装解除を確認。降伏したランス軍は、速やかに国境まで護送する。自国へ帰還させろ」
共和国軍は敗兵へ報復することなく、秩序を保ったまま国境まで送り届けた。
さらに、ランス軍が残していった補給基地も接収される。
倉庫には大量の備蓄品が並んでいた。
小銃。弾薬。砲弾。無線機。軍服。
そして大量の食料品や医薬品。
兵士が思わず声を上げる。
「これだけあれば……」
前線司令官は頷いた。
「まずは住民へ回せ。兵士は後でいい。共和国軍は住民を守るために来た」
その命令に兵士たちは力強く敬礼した。
夕暮れ。
共和国の国旗がルー地方の役場へ静かに掲げられる。
それを見上げた住民たちは、静かに拍手を始めた。
小さな拍手はやがて大きくなり、街中へ広がっていく。
誰一人命を落とすことなく。
ルー地方は、再び共和国のもとへ帰ってきた。




