崩れるランス国
ランス国首相官邸。
執務室の空気は重苦しかった。
外務大臣が慌てた様子で駆け込んでくる。
「首相!またです!」
首相は疲れ切った表情で顔を上げた。
「今度は何だ……メリカ国、ギリス国、本国が共同経済制裁を正式に発表しました!さらに複数の国が追随する構えです!」
首相は机へ手をついた。
「そんな馬鹿な……」
続いて財務大臣も飛び込んでくる。
「首相!株価が急落しています!市場は大混乱です!通貨も売られ続けています!為替市場でも大幅な通貨安が進んでおります!」
首相は額を押さえた。
「経済まで……」
すると今度は商工大臣が入室する。
「首相!商人達から悲鳴が上がっています!」
「共和国との取引はもちろん、各国との契約も止まり始めています!」
「このままでは輸出産業が壊滅します!」
首相は椅子へ座り込んだ。
「ここまで影響が出るとは……」
窓の外から大きな声が聞こえる。
「責任を取れ!」
「戦争反対!」
「経済を返せ!」
首相はゆっくり窓へ近づく。
官邸前には何千人もの市民が集まり、抗議デモを続けていた。
「もう生活できない!」
「政府は何をしている!」
怒号は止まらない。
そこへ軍司令官が入室した。
「首相。軍の状況を報告します共和国軍は現在も前進を続けています。ですが……正直に申し上げます。戦争どころではありません」
首相が振り返る。
「どういう意味だ?」
軍司令官は苦い表情で答えた。
「補給にも経済制裁の影響が出始めています。燃料や物資の調達も難しくなっています」
「国内では反戦デモも拡大し、兵士達の家族も不安を抱えています」
「このまま開戦すれば、国内の混乱はさらに大きくなるでしょう」
部屋は重い沈黙に包まれた。
首相は窓の外を見つめながら、小さく呟く。
「共和国を……甘く見すぎた……」
外務大臣も静かに頷く。
「軍事だけではありませんでした」
「外交も経済も世界世論も、すべて共和国が先に動いていました」
首相は力なく椅子へ腰を下ろす。
「我々は……最初の最後通告で応じるべきだったのかもしれない」
その言葉に、誰も反論できなかった。
ランス国は今、戦場ではなく、自国の崩壊という最大の危機に直面していた。




