経済制裁
共和国軍が進軍を開始してから半日。
ランス国から正式な回答は、未だ届いていなかった。
総統官邸。ラインが執務室へ入る。
「総統。ランス国より、新たな回答はありません」
ベレは静かに頷く。
「そうですか。では、予定通り記者会見を開きます」
数十分後。総統官邸の記者会見場には、国内外の記者が集まっていた。
ベレは演台へ立つ。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
会場が静まり返る。
「共和国はランス国に対し、十分な時間を与えました。最後通告を行い、四十八時間以上、待ちました。さらに、共和国軍が進軍を開始した後も、回答を待ち続けています。ですが。現在に至るまで、正式な回答は一切ありません」
記者席がざわめく。
ベレは続けた。
「共和国は戦争を望んでいません。だからこそ、最後まで外交の道を残しています。しかし。時間稼ぎには応じません」
一呼吸置く。
「よって、本日この時刻をもちまして。共和国政府は、ランス国から輸入される全ての物品に対し、特別課税二〇〇%を実施します」
会場は騒然となる。
「二〇〇%!?」
「事実上、輸入停止ではありませんか!」
「経済制裁ですか!?」
ベレは落ち着いた表情で答えた。
「共和国国民の命が軽く扱われた以上。これまで通りの経済関係を続けることはできません。これは武力ではなく、経済による圧力です」
「ランス国が正式に謝罪し、ルー地方から全軍を撤退するまで、この特別課税は継続します」
一人の海外記者が立ち上がる。
「総統!」
「今後、さらに制裁を強化する可能性はありますか?」
ベレは真っ直ぐ記者を見た。
「あります。ですが、それはランス国の対応次第です。共和国は最後まで平和的解決を望みます」
「しかし。共和国国民の命と尊厳は、決して譲りません」
フラッシュが一斉に光る。
会見終了後、その内容は瞬く間に世界中へ伝えられた。
夕刊や号外には大きく見出しが躍る。
『共和国、ランス国へ特別課税二〇〇%を発動』
『軍事に続き、経済制裁も開始』
『ランス国への圧力、さらに強まる』
共和国は、武力だけでなく経済でもランス国を追い詰め始めていた。
会見終了から数時間後。
ラインが再び執務室へ駆け込んできた。
「総統!朗報です!」
「どうしました?」
「メリカ国、ギリス国、本国の三か国が、共和国の方針を支持すると発表しました!」
「さらに、ランス国に対する共同経済制裁を開始するとのことです!」
ベレは驚いた表情を見せる。
「共同で……?」
「はい!」
「メリカ国は金融取引の制限」
「ギリス国は貿易制限」
「本国は戦略物資の輸出停止を発表しました」
ラインは思わず笑みを浮かべる。
「これでランス国は、共和国だけを相手にしている状況ではありません」
「世界が動きました!」
ベレは静かに頷いた。
「一国では難しくても、世界が協力すれば戦争を防げるかもしれません」
その日の号外は世界中を駆け巡る。
『メリカ・ギリス・本国、共和国支持を表明』
『ランス国へ共同経済制裁』
『国際社会、ルー地方問題で結束』




