最後の回答
共和国軍が進軍を開始してから数時間後。
総統執務室。
ラインが慌てた様子で飛び込んできた。
「総統!ランス国より緊急電報です!」
ベレは手を止める。
「内容は?」
ラインは電報を読み上げた。
「共和国政府に対し、直ちに緊急会談を申し入れる。双方の平和的解決に向け、協議を希望する」
読み終えると、ラインは思わず笑みを浮かべた。
「総統!勝ちました!共和国軍が本当に進軍するとは思っていなかったのでしょう!完全に相手は動揺しています!今なら交渉はこちらが有利です!」
ベレは静かに電報を受け取り、一通り目を通した。
そして机へ置く。
「ラインさん」
「はい」
「時間は十分に与えました。最後通告もしました。四十八時間以上待ちました。世界各国も待ってくれました。それでも返答はありませんでした」
ラインも笑顔を消し、真剣な表情になる。
「……はい」
ベレはゆっくり立ち上がった。
「ランス国へ返信してください。共和国が受け付ける回答は、一つだけです」
ラインはペンを構える。
「青十字支援隊への襲撃について正式に謝罪すること。そしてルー地方から全軍を撤退し、共和国へ返還すること。この二つを同時に受け入れること。共和国が受け付ける回答はそれだけです」
ラインは確認するように尋ねた。
「つまり……謝罪だけでも撤退だけでも駄目ということですね?」
ベレは静かに頷く。
「はい。どちらか一つでは意味がありません。また同じことが繰り返されるだけです。共和国が求めるのは、正式な謝罪と、ルー地方からの完全撤退。それだけです。それ以外の回答には応じません」
ラインは力強く敬礼した。
「承知しました!直ちに外務省経由で、ランス国へ返信します!」
電報は直ちにランス国政府へ送られた。
その内容は短く、明確だった。
『共和国が受け付ける回答は一つのみ』
『青十字支援隊への正式な謝罪。ルー地方からの全軍撤退および共和国への返還』
『この条件以外の回答には応じない』
ランス国政府。
電報を読んだ首相は顔色を変えた。
「……本気だ」
外務大臣は静かに呟く。
「時間稼ぎすら、させてもらえませんか」
部屋には重い沈黙が流れる。
共和国は、もう揺らがなかった。




