初めての海外会談
総統官邸。
外務大臣が慌ただしく執務室へ入ってきた。
「総統。メリカ国大使がお見えです」
ベレは手を止めた。
「メリカ国の……大使?」
「はい」
「正式な首脳会談を希望されています」
ベレは小さく息を吸った。
「いよいよ、本格的な外交ね」
数分後。応接室。
共和国とメリカ国の国旗が並ぶ中、メリカ国大使が入室した。
「ヴィーダーベレ総統閣下。この度のご就任、心よりお祝い申し上げます」
ベレも笑顔で応じる。
「ありがとうございます。本日は、ようこそ共和国へ」
互いに握手を交わし、会談が始まった。
大使は最初に切り出した。
「総統閣下。貴国の経済政策には、我が国も大変注目しております。公共事業、工場再開、失業対策。世界恐慌下において、大きな成果を上げておられます」
ベレは静かに答えた。
「まだ道半ばです。ようやく第一歩を踏み出しただけです」
大使は一枚の書類を差し出した。
「そこで提案があります。メリカ国は共和国との経済協力を希望いたします。さらに貿易の拡大も進めたいと考えております」
ベレは資料に目を通した。
工業製品。機械部品。農産物。
相互輸出入の計画が細かく記されている。
「ありがとうございます。共和国としても、ぜひ前向きに進めさせていただきます」
大使は満足そうに頷いた。
「もう一つ、お伝えしたいことがあります」
「どうぞ」
大使は表情を引き締めた。
「ルー地方についてです」
部屋の空気が変わる。
「我が国の立場は変わりません。ルー地方は共和国の領土であるという支持は、今後も揺らぐことはありません」
ベレは思わず顔を上げた。
「……ありがとうございます」
大使は続ける。
「我が国は武力による解決ではなく、平和的な返還を望んでおります。そのための外交努力には、可能な限り協力いたします」
ベレは静かに頷いた。
「共和国も同じ考えです。まずは外交による解決を目指します。ですが、ルー地方の人々を見捨てることは決してありません」
大使は立ち上がり、再び握手を求めた。
「本日の会談は、大変有意義でした。今後とも、良き友好国として歩んでいきましょう」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
会談が終わり、大使が退室すると、部屋にはヘルムとラインだけが残った。
ヘルムはニヤリと笑う。
「やったな。世界一の大国が味方についた」
ラインも嬉しそうに微笑む。
「外交でも、大きな一歩ですね」
ベレは窓の外を見つめ、小さく頷いた。
「一歩ずつでいい。共和国を豊かにして。そして、ルー地方のみんなを迎えに行きましょう」
その日の夕刊は、大きく報じた。
『メリカ国、共和国との経済協力を正式提案』
『ルー地方への支持は揺るがず』
『若き総統、初の海外首脳会談成功』
共和国は、国内だけでなく、世界との新たな信頼関係も築き始めていた




