↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
240/403

最初の外交使節団

総統就任から一か月。

共和国外務省に一本の電報が届いた。


「メリカ国、ギリス国、本国をはじめ、数か国による合同視察団が共和国を訪問したいとのことです」


外務大臣が報告すると、ベレは静かに頷いた。


「受け入れましょう。隠すことは何もありません」


数日後。共和国中央駅。

各国の国旗を掲げた列車がゆっくりとホームへ入ってきた。


降り立ったのは、経済学者、官僚、外交官、新聞記者などで構成された視察団だった。


メリカ国の代表が周囲を見渡す。


「思っていたより活気がありますね」


ギリス国の代表も驚く。


「世界恐慌の最中とは思えません」


ベレは笑顔で一礼した。


「ようこそ共和国へ。今日は、皆さんに共和国の今をご覧いただきます」


最初に案内したのは工業学校だった。

教室では若い学生たちが旋盤や工作機械を使い、真剣な表情で学んでいる。


メリカ国の技術官が驚く。


「この恐慌の中でも人材育成を続けているのですか?」


ベレは頷いた。


「景気が悪い時こそ、人を育てるべきだと考えています」


次に向かったのは公共事業の現場だった。


道路工事。橋の補修。河川改修。


多くの作業員が汗を流している。

ギリス国の代表が資料を見ながら首を傾げる。


「失業率が改善している理由は、これですか」


「はい。仕事を作ることを最優先にしました」


さらに一行は国民食堂を訪れる。

作業服姿の人々が温かい食事を囲み、笑顔で会話をしていた。

本国の代表が感心したように言う。


「食堂まで整備されているとは……働きながら食べられる環境を作っています」


「工業学校の給食制度を全国へ広げました」


視察団は顔を見合わせた。


「ここまで一体的に進めている国は聞いたことがありません」


その後、一行は再稼働した鉄工所も視察した。


煙突から立ち上る煙。

動き続ける工作機械。

元気よく働く職人たち。


以前倒産した町工場の元社長も、笑顔で働いていた。


「もう一度、この工場で働けるとは思いませんでした」


その言葉に、視察団は静かに頷く。


夕方。

総統官邸で意見交換会が開かれた。

メリカ国の代表が質問する。


「総統。なぜ共和国だけが、ここまで早く立ち直り始めているのでしょうか」


会場が静まり返る。

ベレは少し考え、穏やかな口調で答えた。


「景気を支えるのは、お金だけではありません」


代表たちは真剣に耳を傾ける。


「人に仕事を与えることです。仕事があれば生活できます。生活が安定すれば、お店で買い物をします」


「お店は商品を仕入れます。工場は物を作ります。そうして経済は再び動き始めるのです」


会場は静かな拍手に包まれた。

メリカ国の代表は立ち上がり、一礼する。


「大変勉強になりました」


ギリス国の代表も続く。


「ぜひ、我が国でも参考にさせていただきます」


ベレは微笑んだ。


「共和国も、まだ道半ばです。お互いに学び合い、より良い未来を築いていきましょう」


視察団が帰国した数日後。


世界各国の新聞は、一斉に共和国を取り上げた。


『恐慌下で雇用を生み出す共和国』


『若き総統の経済政策に世界が注目』


『公共事業と教育が生んだ復興の奇跡』


こうして共和国の名は、世界中へ少しずつ広がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。