世界が驚く
その日の昼。
総統執務室の扉が勢いよく開いた。
「おーい!」
ヘルムが両腕いっぱいに新聞の束を抱えて入ってくる。
「うわっ!何ですか、その量!」
ドサッ。
机の上へ新聞の山が積み上げられた。
「各国で出版されている新聞だ。日付は多少古いが、これからは全部目を通せ」
ベレは一番上の新聞を手に取る。
「外国の新聞?」
「ああ。相手を知らなきゃ外交なんざ出来ねぇ。読めねぇ言葉は翻訳して、要約したものを渡す」
「なるほど」
ベレは一枚ずつ新聞を見始めた。
「これは……メリカ国ね。これはギリス国。この文字も読めるわ」
ヘルムは少し驚く。
「ほぅ。読めるのか?」
「ええ」
ページをめくっていたベレの手が止まった。
「……ん?これは!?日本語……」
ヘルムが首を傾げる。
「日本語?」
「この国は何ていうの?」
地図を確認しながら答える。
「えーっと……本って国だ。アジアの端にある島国だな」
ベレは嬉しそうに笑う。
「これも読める!」
ヘルムは目を細めた。
「他はどうだ?」
ベレは新聞を仕分けしながら答える。
「これと、これと、これね。この三つは読めない。それ以外は大丈夫」
ヘルムは思わず笑った。
「中々の博学だな。解った。その三か国だけ翻訳を付けさせる。ありがとうございます」
ベレは早速、各国の記事へ目を通し始めた。
メリカ国の新聞には、大きな見出しが踊っていた。
『共和国、恐慌下でも大規模公共投資を開始』
『失業対策を最優先』
ギリス国の新聞にも似た記事が載っている。
『共和国、新政権が大胆な経済政策』
『公共事業と金融政策を同時実施』
さらに、本国の新聞には。
『新総統、世界恐慌へ独自政策』
『雇用を守る国家運営に注目』
ベレは思わず呟いた。
「もう海外でも話題になっているのね」
ヘルムは腕を組んだ。
「珍しいからな。世界中が恐慌で予算を削ってる中、お前は逆に公共事業を始めた。注目されねぇ方がおかしい」
ラインが新たな報告書を持って部屋へ入る。
「総統。外務省から報告です」
「どうしました?」
「メリカ国、ギリス国、本国など数か国から正式な問い合わせが来ています」
「問い合わせ?」
「はい」
「共和国の経済政策について詳しく知りたいとのことです」
ベレは少し驚いた。
「もう?」
外務大臣も頷く。
「さらに数か国が、経済視察団の派遣を検討しているそうです」
会議室が静まり返る。
ヘルムがニヤリと笑う。
「来るぞ!世界中の役人や学者が、お前のやり方を見にな」
ベレは少し困ったように笑った。
「まだ成功した訳じゃないのに……」
ヘルムは肩をすくめる。
「だから見に来るんだよ!成功するか失敗するか、それを確かめにな」
ベレは机の上へ並ぶ世界各国の新聞を見渡した。
「なら!しっかり結果を出さないとね」
窓の外では、公共事業へ向かう作業員たちが今日も元気よく歩いていた。
共和国の挑戦は、今や国内だけでなく、世界中から注目され始めていた。




