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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者: 稔


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国民食堂

公共事業が始まり、共和国には少しずつ活気が戻り始めていた。

しかし、総統執務室ではベレが新たな資料を見つめていた。


「失業者数は減っています」


ルマルが報告する。


「ですが、まだ生活が苦しい家庭は多くあります」


ベレは静かに頷いた。


「仕事が決まっても、最初のお給料までは時間がかかるものね」


ラインが尋ねる。


「何か良い方法がありますか?」


ベレは少し考え、ふと思い出したように微笑んだ。


「そうだわ!工業学校の給食制度」


ヘルムが首を傾げる。


「あれか?」


「はい」


「あの仕組みを全国へ広げます」


翌日。

ベレは閣議で新しい制度を発表した。


「名称は『国民食堂』です」


大臣達が資料を見る。


「公共事業へ従事する人。仕事を探している失業者。生活が困窮している家庭」


そうした人たちが、安価、または無料で温かい食事を取れる施設を全国へ設置する計画だった。


農業大臣が尋ねる。


「食材はどうするのですか?」


ベレは答える。


「国内の農家から優先的に購入します。余った農産物も活用できます」


工業大臣も頷く。


「食堂の設備は町工場へ発注できますね」


交通大臣も続ける。


「各地への配送も鉄道が使えます」


ベレは笑顔になった。


「そうです!一つの政策が、次の仕事を生みます!全部が繋がっているんです」


数週間後。

共和国第一号となる国民食堂が開店した。


昼時。公共事業帰りの作業員たちが店へ入る。


湯気の立つスープ。

焼きたてのパン。

温かいシチュー。


作業員は思わず笑顔になる。


「温かい……久しぶりに、こんな食事を食べた」


隣の若い作業員も嬉しそうに頷く。


「働きながら食べられる」


「これなら家族も安心だ」


店では子どもたちも笑顔で食事をしていた。

厨房では、地域の女性たちが楽しそうに料理を作っている。

食堂そのものが、新たな雇用にもなっていた。


その日の夕方。

ベレは視察で食堂を訪れる。

子どもたちの笑顔を見て、安心したように微笑んだ。


「やっぱり!温かい食事は、人を元気にするわね」


ヘルムも静かに頷く。


「腹が減ってちゃ、仕事もできねぇからな」


ラインは店内を見回しながら言う。


「工業学校から始まった給食制度が、共和国中へ広がりましたね」


ベレは嬉しそうに答えた。


「領地でできたことは、共和国でもできる!そう信じていましたから」


翌日の新聞には、大きく見出しが載った。


『総統、新制度「国民食堂」開始』


『働きながら食べられる共和国へ』


『工業学校の給食制度を全国へ拡大』


街の人々は新聞を読みながら笑顔になる。


「この国、本当に変わり始めたな」


その言葉は、共和国に少しずつ戻り始めた希望そのものだった。

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