工場再始動
公共事業開始から数週間。
共和国各地の工場へ、一通、また一通と注文書が届き始めていた。
「道路工事用資材、橋梁用鋼材、鉄道補修用レール、港湾整備用資材」
今まで止まっていた工場が、少しずつ動き始める。
ある鉄工所。
社長は一枚の注文書を何度も見返していた。
「……本物か?」
社員が駆け寄る。
「社長!公共事業から正式発注です!」
社長は思わず拳を握り締めた。
「仕事だ!みんな!仕事が来たぞ!」
静まり返っていた工場に歓声が響く。
「やった!これで働ける!」
「機械を動かせ!」
止まっていた工作機械がゆっくりと動き出す。
別の町では木材会社にも大量注文が入っていた。
「橋の補修用木材、仮設資材、港の整備資材」
職人達は笑顔で木材を運び始める。
共和国中で、止まっていた歯車が少しずつ回り始めていた。
その頃、総統執務室。
ラインが最新の報告書を持って入ってくる。
「総統、各地の公共事業が順調に始まっています」
ベレは資料へ目を通した。
「鉄工所も動き始めたのね。木材会社も……」
ヘルムは窓の外を見ながら笑う。
「仕事が仕事を呼び始めたな」
ベレは小さく頷く。
「うんうん。早速、手形の効果かしら?」
少し考え込む。
「それとも、その前に通した公共事業法や技術者保護法の効果?」
ルマルも資料を見ながら答える。
「恐らく、その両方です。公共事業で仕事を作り、メ手形で資金を回す。それがうまく噛み合い始めています」
ベレは嬉しそうに微笑んだ。
「やっぱり、一つだけじゃ駄目なのね。全部が繋がって、初めて動き出す」
しかし、その笑顔はすぐに真剣な表情へ戻る。
「でも……まだまだね。仕事が戻っていない工場もたくさんある。失業している人も、まだ大勢いる。ここで満足したら終わりよ」
ヘルムは帽子をかぶり直しながら笑う。
「相変わらず厳しいな」
ベレは報告書を閉じた。
「共和国全部が元気になるまで、私達の仕事は終わりません」
その日の夕刊。
『公共事業効果、各地で工場再始動!』
『鉄工所・木材会社に大型受注相次ぐ』
『共和国経済、回復の兆しか』
新聞を読んだ町工場の元社長は、工場の煙突から立ち上る煙を見上げながら、小さく呟いた。
「もう一度……この煙を見られる日が来るとはな」
共和国の工場には、少しずつ活気が戻り始めていた。




