最初の記者会見
総統就任から一週間。
共和国政府は、総統就任後初となる記者会見を開いた。
会場には国内外から数百人の記者が集まる。
最前列には、見慣れた顔があった。
ウス・ライ。
手帳を片手に、静かにベレを見つめている。
壇上へ上がったベレは、一礼した。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
静かな拍手が起こる。
司会が口を開いた。
「それでは、ご質問をどうぞ」
真っ先に手を挙げたのは海外紙の記者だった。
「総統閣下。総統として、最初に何をなさいますか?」
会場が静まり返る。
誰もが答えを待った。
ベレは迷うことなく答える。
「失業者を減らします」
その一言だけだった。
しかし、その言葉には強い意志が込められていた。
記者達は一斉にペンを走らせる。
ベレは続けた。
「そのために、すでに幾つかの法案へ署名しました」
「技術者保護法。公共事業実施法。国家備蓄法。農業機械普及支援法。工業学校拡充法。これらは全て、雇用を守るための政策です」
一人の記者が質問する。
「財源はどうされるのですか?」
ベレは静かに答えた。
「まず、官邸の無駄を削減しました」
「公用車の削減」
「不要な接待や晩餐会の廃止」
「不要経費の見直し」
「国民の税金は、国民のために使います」
さらに続ける。
「集められる資金は、可能な限り集めます」
「その全てを失業者対策へ回します」
「仕事があれば生活できます」
「生活が安定すれば経済も動きます」
「まずは働く場所を作ることが最優先です」
会場は静まり返っていた。
ウス・ライはペンを止め、小さく笑う。
「やっぱり、お前さんらしいな」
別の記者が尋ねる。
「外交問題やルー地方については?」
ベレは頷いた。
「もちろん重要です。ですが、今日仕事を失った人にとって、一番大切なのは明日の生活です」
「まずは国内を立て直します。その上で外交にも全力を尽くします」
会見は一時間以上続いた。
最後までベレの答えは一貫していた。
「国民の生活を守る」
その一点だけだった。
翌朝。
共和国中の新聞が、一斉に同じ言葉を一面へ載せた。
『総統、最初の記者会見』
『「失業者を減らします」――ベレ総統、最優先政策を明言』
『官邸改革で財源を確保、公共事業を本格始動へ』
街では新聞を読んだ人々が笑顔を見せる。
「初めてだな」
「総統が自分達の仕事の話をしてくれたのは」
「今度は本当に変わるかもしれない」
その頃、総統執務室では、ベレが次の書類に目を通していた。
「まだ始まったばかり」
「共和国を立て直すには、やることが山ほどあるわ」
そう呟くと、ベレは再びペンを手に取り、次の改革へ向けて歩き始めた。




