官邸の大掃除
総統就任から数日。
ベレは官房長官の案内で、総統官邸の視察を行っていた。
「こちらは晩餐会場です」
大きな扉が開く。
中には何十人も座れる長いテーブル。
豪華なシャンデリア。金で装飾された食器棚。
ベレは目を丸くした。
「ここで何をするんですか?」
官房長官が答える。
「各国要人との晩餐会や、国内有力者との会食などです」
ベレは資料を受け取る。
一回の晩餐会の費用。
その金額を見た瞬間、言葉を失った。
「……え?一回で、こんなに?」
官房長官は静かに頷く。
「毎月、数回開催されておりました」
ベレは小さくため息をつく。
「こんなことをしていたの?」
続いて車庫へ向かう。
高級公用車が何台も並んでいた。
「こちらは総統専用車、こちらは来賓用、こちらは予備車です」
ベレは台数を数える。
「こんなに必要ですか?」
「慣例でございます」
即答だった。
「慣例……」
その言葉を聞いたベレは首を横に振る。
執務室へ戻るなり、紙を取り出した。
「今日から変えます」
官房長官が姿勢を正す。
「ご指示を」
ベレは次々と書き始めた。
第一、公用車を半数以下に削減。
「必要最低限で十分です」
第二、不要な接待・晩餐会を廃止。
「本当に必要な外交だけ行います」
第三、官邸の不要経費を全面見直し。
「削減できるものは全て削減してください」
官房長官は驚いた表情を浮かべる。
「かなりの予算が浮きますが……」
ベレは迷わず答えた。
「その予算は失業者支援と公共事業へ回してください。国民の税金です。国民のために使いましょう」
ヘルムは腕を組み、小さく笑った。
「やっぱり、お前は変わらねぇな」
ラインも微笑む。
「それでこそ、総統です」
官房長官は深く頭を下げた。
「直ちに実施いたします」
その日の午後。
ベレはさらに指示を出した。
「過去十年間の官邸支出を公開してください」
官房長官が驚く。
「公開……ですか?」
「はい。隠す理由はありません。国民のお金ですから」
数日後。
共和国中の新聞が、一斉に報じた。
総統、就任早々に改革断行!
技術者保護法・公共事業・国家備蓄法などを次々成立!
官邸の無駄遣いを一斉見直し!
過去の支出資料を公開!
元与党の贅沢三昧、次々と明らかに!
豪華晩餐会、高級公用車、多額の接待費……。国民の税金はどこへ消えていたのか。
街では新聞を読んだ市民たちが驚いていた。
「こんな金の使い方をしてたのか!」
「だから財政が苦しかったんだ!」
「今度の総統、本気だな」
別の男も笑う。
「まだ就任して数日だぞ?」
「仕事が早すぎるだろ」
その頃、総統執務室では、ベレが新しい資料を読み始めていた。
「まだまだですね。共和国には、直すところがたくさんあります」
そう呟くと、ベレは再びペンを手に取り、次の改革へ向けて動き始めた。




