突然の一本化
議場は、大きなどよめきに包まれていた。
「投票の結果。ヴィーダーベレ君を首相に指名することを決定いたします」
木槌が高らかに鳴り響く。
私は、まだ状況を理解できずにいた。
「……え?私が……首相?」
周囲の議員達が次々と近寄ってくる。
「この度は、首相就任おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
えーっと……確か、この人は昨日会った第三野党の代表よね?名前……忘れちゃった……
頭の中が混乱している。
第三野党代表は一礼すると、議長へ向き直った。
「議長。早速ですが、我が党から緊急議案を提出させていただきます」
議場が静まり返る。
「本来であれば、この場には大統領がおられるはずでした。しかし、この度の痛ましい事件により、大統領職は空席となりました。国家の混乱を防ぐため、憲法改正案を提出いたします」
私は首を傾げた。え?何の議案?
第三野党代表は続ける。
「大統領制を廃止し、大統領の権限を首相へ一本化する。国家元首と行政の長を統合し、新たに総統職を設けるものです」
私は固まった。
えっ!?ちょっと待って!?
その瞬間、与党席から怒号が飛んだ。
「ふざけるな!」
「そんな憲法改正を、この場でやる気か!」
別の与党議員も机を叩く。
「大統領がお亡くなりになった日に政治利用とは卑劣だ!」
「貴様らに共和国を任せられるか!」
野党席からも声が返る。
「今まで何もしなかったのは誰だ!」
「短命政権を何度も作ったのは与党だろ!」
議場は一気に騒然となる。
議長が何度も木槌を叩いた。
「静粛に!」
「静粛に願います!」
それでも与党議員は叫び続けた。
「こんな議案は認めん!」
「議会の横暴だ!」
その時だった。
私は静かに立ち上がった。
議場の視線が一斉に集まる。
「私は、この議案を事前に知りませんでした」
議場が静まり返る。
「ですが共和国の未来を決めるのは、この議場です。最後は、一人ひとりの議員が、自らの責任で判断してください」
短い沈黙が流れる。
議長はゆっくり頷いた。
「それでは採決いたします。賛成の方は、ご起立願います」
ガタッ。
まずシュタール労働者党の議員達が立ち上がる。
続いて第二野党。
さらに第三野党。
無所属議員まで次々と立ち上がった。
私は座ったまま辺りを見回す。
ん?ん?んんん!?
議長が木槌を鳴らす。
「賛成多数。よって、本議案は可決されました」
議場は拍手に包まれる。
議長は厳かに宣言する。
「これにより、大統領制は本日をもって廃止されます」
「大統領の権限は首相へ移行」
「国家元首と行政の長を統合し、新たに総統職を設置いたします」
私は完全に思考が止まっていた。
えっ……えぇぇぇ!?
議長は静かに宣言する。
「これに伴い、ヴィーダーベレ首相は首相職を辞任」
「同時に、新制度に基づき」
「ヴィーダーベレ総統の就任をここに宣言いたします」
ドンッ!
木槌が高らかに鳴り響く。
議場は大きな拍手に包まれた。
ヘルムは腕を組みながら、小さく笑った。
「これで全部、繋がったな」
ラインも思わず息を吐く。
「お嬢様……いえ!ヴィーダーベレ総統、おめでとうございます」
私は呆然と立ち尽くしたまま、小さく呟いた。
「……ちょっと待って誰か、本当に最初から説明してください……」




