↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
224/261

譲れない一線

総選挙から一週間。

シュタール労働者党が野党第一党となったことで、党本部には連日、多くの来客が訪れていた。


その日も一本の連絡が入る。


「与党幹部がお会いしたいそうです」


ラインがそう告げると、ヘルムは鼻で笑った。


「来たか」


「何がです?」


「連立の話だ」


ベレは静かに立ち上がった。


「会いましょう」


翌日。

国会議事堂の応接室。

与党幹部が笑顔で迎えた。


「ベレ議員。この度は野党第一党、おめでとうございます」


ベレも軽く頭を下げる。


「ありがとうございます」


一通りの挨拶が終わると、与党幹部は本題を切り出した。


「単刀直入に申し上げます。シュタール労働者党と連立を組みませんか?」


部屋が静まり返る。

ベレは表情を変えない。


「条件を伺います」


与党幹部は指を三本立てた。


「一つ。ルー地方問題は当面棚上げにしていただきたい。外交問題ですので、慎重に進める必要があります」


ベレは黙って聞いていた。


「そして二つ目。汚職事件については、過去のことです。これ以上の追及は控えていただきたい。未来へ向けて協力しましょう」


その言葉を聞いた瞬間。

ベレは迷うことなく口を開いた。


「お断りします」


即答だった。与党幹部の表情が固まる。


「……まだ条件は最後まで」


「十分です」


ベレは静かに相手の目を見る。


「ルー地方は共和国の心臓部です。棚上げにはできません。そして、汚職は過去の話ではありません。罪を曖昧にしたまま未来は作れません」


与党幹部は苦笑した。


「政治とは妥協ですよ」


ベレは首を横に振る。


「妥協する所と、してはいけない所があります。この二つだけは譲れません」


応接室は静まり返った。

与党幹部は椅子から立ち上がる。


「残念です。共和国のためになると思ったのですが」


ベレも立ち上がる。


「共和国のためだからこそ、お断りします。私達は議席を増やすために政治をしているのではありません。共和国を立て直すために政治をしています」


短い沈黙。

やがて与党幹部は一礼し、部屋を後にした。


その日の夕方。

党本部。ラインが心配そうに尋ねる。


「よろしかったのですか?」


「連立すれば政権へ入れたかもしれません」


ベレは微笑んだ。


「政権へ入ることが目的じゃないもの。国民との約束を守ることが目的よ」


ヘルムは帽子を深くかぶり直した。


「やっぱり断ったか。当然です」


ベレは迷いなく答える。


「ルー地方も汚職もどちらも共和国の未来に関わる問題です。ここで譲ったら、私達はシュタール労働者党ではなくなってしまいます」


ヘルムは小さく笑った。


「百一議席になっても、お前は変わらねぇな」


ベレも笑顔で答えた。


「変わったら、ここまで応援してくださった皆さんを裏切ることになりますから」


窓の外では、夕日が国会議事堂を赤く染めていた。

シュタール労働者党は政権への近道ではなく、自らの信念を選んだ。

その決断は、やがて共和国の政治をさらに大きく動かしていくことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。