政権の終わり、新たな始まり
世界恐慌が共和国を襲ってから数か月。
工場は止まり。失業者は増えつづけ。
政治の世界では汚職や事件が相次いだ。
そして――その日の朝。
共和国中を駆け巡る号外が配られた。
『首相、辞任を表明』
『大統領、辞表を受理』
『総選挙を実施へ』
街は騒然となった。
「とうとう辞めたか……」
「ここまで来たら仕方ねぇよ」
「恐慌対策も失敗ってか何もしてねーしな」
「汚職も次々出てきたしな」
酒場でも、市場でも、人々の話題はそれ一色だった。
その頃、党本部。
ラインが号外を手に部屋へ飛び込んできた。
「ベレ様!首相が辞任しました!」
ベレは静かに新聞を受け取る。
記事には、首相の声明が掲載されていた。
「共和国がこのような状況となった責任を取り、首相を辞任する。」
そして、その下には大統領の声明。
「辞表を受理する。共和国憲法に基づき、総選挙を実施する」
ルマルが静かに息を吐く。
「ついに政局が動きましたね」
ヘルムは腕を組みながら笑う。
「ようやくか。長かったな」
部屋は静かだった。
ベレは新聞を閉じる。
「勝った……」
そう呟いたあと、ゆっくり首を振る。
「違う。まだ何も勝っていない」
皆がベレを見る。
ベレは立ち上がった。
「選挙は始まりにすぎない。大切なのは、その先よ」
黒板の前へ歩き、新しい文字を書いた。
『政府が動かないなら、私達でできることをやる』
「私達は今まで、それを続けてきました。倒産した企業をつなぎ、職人を紹介し、工業学校を作り、農業を支え、提案が却下されても、現場へ足を運び続けました」
十人の議員は静かに頷く。
ベレは一人ひとりの顔を見渡した。
「これから選挙になります。でも、私達は選挙のために動くんじゃありません。共和国を立て直すために動きます」
ラインが力強く答える。
「はい!」
ルマルも続く。
「今までどおり現場へ向かいます」
農業会社出身の議員も笑顔を見せた。
「農家も待っていますからね」
ヘルムは帽子を手に取る。
「さて忙しくなるぞ」
ベレは窓の外を見つめる。
街にはまだ失業者がいる。
工場も完全には動いていない。
それでも人々の表情には、少しだけ希望が戻り始めていた。
「私達にできることを、一つずつ。それが共和国を変える一歩になる」
総選挙の号砲が鳴る。
共和国は、新しい時代への扉を開こうとしていた。




