小さな希望
世界恐慌が始まって数か月。
世界中で工場が止まり、貿易は大きく落ち込んでいた。
そんなある日。
党本部へ一本の電話が入る。
「ベレ議員!」
商工会議所の担当者だった。
「海外から注文です!」
私は思わず立ち上がる。
「本当ですか!」
「はい!」
「数は少ないですが、メリカ国とギリス国、それに周辺諸国から共和国製トースターの注文が入りました!」
私は思わず笑みを浮かべた。
「良かった……」
ルマルも資料を確認する。
「以前より数量は少ないですが、確かに注文書です」
農業会社出身の議員も嬉しそうに言う。
「恐慌なのに、注文が来たんですね」
商工会議所の担当者は頷いた。
「価格ではありません!品質を評価してくださっています。壊れにくい共和国製なら、この状況でも欲しいそうです」
ベレは静かに注文書を見つめた。
「ブランドは、一日ではできない。でも、一歩ずつ積み重ねてきたものは無駄じゃなかったのね」
ヘルムも珍しく笑う。
「小さい注文でも十分だ!信用は金じゃ買えねぇ」
ベレは力強く頷いた。
「焦らない!一つ一つ、丁寧に作りましょう。その積み重ねが、共和国を支えてくれるわ」
党本部には久しぶりに明るい空気が流れた。
しかし、その日の夕方。
ヘルムはラインを自室へ呼んでいた。
「どうしましたか?」
ラインが部屋へ入る。
ヘルムは椅子へ深く座ったまま口を開いた。
「お前の方で抱えてる資料は、まだあるのか?」
ラインは静かに頷く。
「はい。まだあります」
ヘルムはニヤリと笑った。
「なら、この辺でもう一発、ぶちかますか」
ラインは一瞬驚く。
「え?よろしいのですか?少し控えていましたが……」
ヘルムは立ち上がり、棚から一冊の分厚い資料を取り出した。
「こっちも準備が終わった。俺も一発ぶちまくる。今回はダブルでやるぞ」
ラインの表情が引き締まる。
「……分かりました。すぐ取り掛かります」
ヘルムは窓の外を見ながら、小さく笑った。
「恐慌の裏で。腐った根っこもまとめて引き抜いてやる」
党本部では、共和国再建への小さな希望が芽生え始めていた。
その一方で、水面下では共和国の政治を揺るがす、新たな一手が静かに動き始めていた。




