支持率逆転
世界恐慌が始まって一か月。
共和国新聞社は、大規模な世論調査を実施した。
翌朝。
新聞の一面には、大きな見出しが躍る。
『政府支持率 過去最低を更新』
『シュタール労働者党、野党第一党へ迫る』
記事には調査結果が掲載されていた。
政府支持率は大幅に下落。
一方で、ベレ率いる新共和国党への支持は急上昇。
初めて野党第一党となる勢いを見せていた。
街では朝から新聞の話題でもちきりだった。
「見たか?」
「政府支持率、また下がったぞ」
別の男も頷く。
「そりゃそうだ。何もしてねぇじゃねぇか」
市場では商人たちも新聞を広げる。
「逆に、あのお嬢ちゃんの党は伸びてるな」
「公共事業も銀行対策も技術者保護も全部却下されたのに、ちゃんと提案してたからな」
年配の男性が笑う。
「口だけじゃなかったってことだ。現場を歩いて、ちゃんと考えてた」
その頃。新聞社。
編集長が記事を読み終える。
「見事な逆転ですね」
向かいでは、ウス・ライが原稿を書いていた。
ペンを止めることなく話す。
「当然だ。今回、国民が評価したのは演説じゃねぇ」
編集長が尋ねる。
「では、何を評価したと?」
ウス・ライは静かに答える。
「提案だ。公共事業、技術者保護、銀行対策、国家備蓄。どれも採用されなかった。だが、国民は見ていた」
編集長は頷く。
「なるほど……」
ウス・ライは原稿の最後へ、一文を書き加えた。
『恐慌で評価されたのは、演説ではない。未来を見据えた提案だった。』
その日の午後。
党本部。
ラインが新聞を持って駆け込んできた。
「お嬢様!世論調査です!」
ベレは新聞を受け取り、静かに目を通す。
「支持率……」
ルマルも驚いた。
「野党第一党まで、あと少しですね」
ヘルムは苦笑する。
「ようやく国民が追いついてきたか」
ベレは新聞を閉じ、静かに首を振った。
「支持率は嬉しい。でも、それが目的じゃない」
皆がベレを見る。
「国民の生活が良くならなければ意味がない。支持率は、その結果として付いてくるものよ」
ヘルムは笑みを浮かべた。
「その考えを忘れるな。だから皆、お前についてきてるんだ」
ベレは窓の外を見つめた。
街ではまだ失業者が職を探し、工場では機械が止まったままの場所もある。
「まだ終わってない。ここからが、本当の勝負ね」
その言葉とともに、新共和国党は小さな野党から、共和国を動かす存在へと変わり始めていた。




