消えた公共工事予算
数日後。
共和国中を、新たなニュースが駆け巡った。
新聞の一面には、大きな見出しが躍る。
『公共工事予算、執行されず』
『担当議員、自宅を強制捜査』
記事には詳しく書かれていた。
「恐慌対策として計上されていた公共工事予算の一部が、予定どおり使われていないことが判明」
担当議員は議会で、
「私は知らない。担当部署へ任せていた。と説明した」
「しかし、会計記録には不自然な点が多く見つかり、警察は強制捜査を実施」
「その結果――自宅の地下室から大量の金塊が発見された。警察は、公金横領および着服の疑いで担当議員を逮捕した」
首都の市場。
新聞を読んだ人々がざわついていた。
「何だよ!」
「俺らの税金じゃねぇか!」
別の男も新聞を握り締める。
「恐慌で仕事がねぇってのに!」
「その金を着服してたのか!」
酒場でも話題は持ちきりだった。
「この前の賭けポーカー事件もそうだけどよ」
「ああ。ある所にはあるんだな」
別の客が苦笑する。
「俺なんか今日の飯にも困ってるってのにな」
年配の男が新聞を机へ叩きつける。
「それだけ金がありゃ、俺らのことなんか知ったこっちゃねぇんだろ」
「だから現場の声が届かねぇんだ」
周囲も静かに頷いた。
その頃。
党本部。ラインが新聞をベレへ手渡す。
「また新しい事件です」
ベレは記事を読み終え、静かに息を吐いた。
「公共工事の予算が……本当に現場へ届いていなかったのね」
ルマルも険しい表情になる。
「これでは景気対策になりません。予算は、使われて初めて意味があります」
ヘルムは腕を組んだ。
「恐慌の最中に、公金へ手を出すとはな」
ベレは新聞を閉じ、窓の外を見つめる。
「だから公共事業が進まなかったのね……仕事を待っていた人もいたはずなのに」
しばらく沈黙が流れる。
やがてベレは静かに口を開いた。
「お金を配るだけでは駄目。ちゃんと現場へ届く仕組みも作らないと」
ルマルが頷く。
「制度そのものを見直す必要がありますね」
ベレも力強く頷いた。
「ええ。恐慌を乗り越えるだけじゃない。二度と同じことが起きない国を作りましょう」
党本部では、新たな政策の検討が始まる。
一方その頃、共和国では次々と過去の不正が明るみに出始めていた。
世界恐慌は経済だけでなく、長年積み重なってきた政治のひずみまでも、容赦なく表へ引きずり出し始めていた。




