闇に消えた夜
翌朝。
共和国中に配られた新聞の一面は、誰もが息をのむ見出しだった。
『現職大臣と議員三名、他四名、高級ホテルで死亡』
『密室で何が起きたのか』
記事には続きが書かれている。
「昨夜遅く、市内の高級ホテルの一室で現職大臣一名、議員三名、そして身元確認中の四名、合わせて八名が死亡しているのが発見された」
「室内には大量の金貨が散乱しており、机の上にはトランプが広げられていた」
警察は、
「賭博中のトラブル。裏社会との金銭問題」
など、あらゆる可能性を視野に捜査を進めている。現時点では事件の詳細は不明である――。
新聞を読み終えたウス・ライは、静かに新聞を畳んだ。
「ふぅ……」
コーヒーを一口飲む。
「早速動くとは……怖いねぇ」
編集長が驚いた表情で尋ねる。
「何か知っているんですか?」
ウス・ライは首を横に振った。
「知らねぇさ。だが、一つだけ分かる」
窓の外を見ながら続ける。
「これだけの事件が起きりゃ、警察は当分こっちで手一杯だ」
編集長も頷く。
「確かに、総力を挙げるでしょうね」
ウス・ライは小さく笑う。
「いや。恐らく、それだけじゃ済まねぇ」
編集長が首を傾げる。
「と言いますと?」
「今頃、生き残った連中は震えてる。次は自分じゃねぇかってな。互いにまた、疑い始める。証拠を消そうとする奴。逃げる奴。口封じを始める奴……どんどん悪化していく」
編集長は無言になった。
ウス・ライは新聞を机へ置く。
「政治も裏社会も、一度歯車が狂えば止まらねぇ。しばらく共和国は荒れるぞ」
その頃。
党本部。
ベレは恐慌対策の資料に目を通していた。
ラインが新聞を机へ置く。
「今朝の記事です」
ベレは見出しを見て、小さく眉をひそめる。
「また大きな事件ね……景気だけでも大変なのに」
ヘルムは腕を組んだまま新聞を見つめる。
「世の中が荒れ始めると、こういう事件も増える」
ベレは静かに新聞を閉じた。
「だからこそ。私たちは景気を立て直さないと。国民が安心して暮らせる国を作らないとね」
党本部では、誰も事件の真相を語る者はいなかった。
しかし共和国では、経済危機に加え、新たな不安が静かに広がり始めていた。




