ヘルムの貸し倉庫
ラインは党本部へ戻ると、自室の鍵を閉めた。
机の上へ、ウス・ライから託された鞄を置く。
ゆっくりと口を開く。
中には分厚い資料が何冊も入っていた。
一人目。二人目。三人目。
ページをめくるたび、ラインの表情が険しくなる。
「……今となっては、現職大臣ばかりじゃない」
賄賂。不正契約。公金の不透明な流れ。
どれも裏付け資料まで丁寧に整理されていた。
ラインは一枚ずつ分類していく。
「これは私でも対処できそうね」
別の山を作る。
「こっちは……ヘルムさんに任せた方が早いか」
さらに資料を封筒へ入れる。
「後は証拠の裏付けを取れば十分」
そう呟いて席を立った。
翌日。
ラインはヘルムの執務室を訪れる。
「ヘルムさん。こちらの資料を」
ヘルムは封筒を受け取り、椅子へ座る。
「おう。またか」
一枚ずつ目を通していく。
「ほぅ……これは派手だな。なるほど。分かった」
封筒を閉じる。
「任せとけ」
ラインは一礼した。
「お願いします」
少し間を置いてから、少し言いにくそうに口を開く。
「それと……別件ですが。この前いただいた装備ですが……」
ヘルムが眉を上げる。
「ん?」
「無くしてしてしまいまして、新しい物を、お借りできませんか?」
ヘルムは数秒間黙っていた。
そして吹き出す。
「……無くした、ねぇ。まあ有り得んな」
ラインは苦笑するしかなかった。
ヘルムは肩をすくめる。
「深くは聞かねぇよ。情報屋には情報屋の事情がある」
そう言うと机の引き出しから古びた鍵を取り出した。
「これだ」
ラインは鍵を受け取る。
「これは?」
「倉庫だ。昔、シア国との戦いで鹵獲した装備を保管してある」
ラインは驚く。
「鹵獲品ですか?」
「ああ。今じゃ使われてねぇ物も多い。必要なら好きなのを持ってけ。返さなくても構わねぇ」
ラインは深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
ヘルムは笑いながら言う。
「ただし。使う相手を間違えるな。裁くのは法律だ。俺たちは証拠を届けるだけだ」
ラインは真剣な表情で頷いた。
「はい。そのつもりです」
ヘルムは再び資料へ目を落とす。
「さて……まずは、この大臣連中の裏付けから始めるか。慌てる必要はねぇ。一人ずつ、確実にな」
党本部では表向き、恐慌対策が続いていた。
その一方で、水面下では、共和国の政治を揺るがす証拠が静かに動き始めていた。




