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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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209/213

共和国技術者保護計画

公共事業計画が却下されてから数日後。

党本部。

ベレは一冊の資料を机へ置いた。

表紙には、新しい題名が書かれている。


『共和国技術者保護計画』


ルマルが資料を開く。


「これは……」


ベレは静かに説明を始めた。


「恐慌で会社は倒産してもいいとは思わない。でも、一番失っちゃいけないのは技術者よ」


ヘルムが腕を組む。


「技術は一日じゃ身に付かねぇからな」


ベレは黒板へ図を書いた。


会社が倒産する。

技術者が仕事を失う。

生活のために別の仕事へ就く。

技術が失われる。


「これが一番怖いの」


会議室は静まり返る。

ベレは続ける。


「だから、仕事を失った技術者には工業学校で教えてもらう!国営工場で試作品を作ってもらう!新しい技術を研究してもらう!景気が戻ったら、また民間企業へ戻ればいい」


農業会社出身の議員も頷いた。


「技術だけは残せますね」


ベレは笑顔で答える。


「そう!技術者を失ってはいけない!次の世代へ残さなきゃ」


ルマルは資料を閉じた。


「素晴らしい計画です!将来への投資ですね」


数日後。

その計画書は政府へ提出された。

しかし――返ってきた回答は、今回も冷たかった。


『財源不足および制度整備に時間を要するため、現時点では採用を見送る』


却下。


ベレはその紙を静かに机へ置いた。


「また……却下」


ラインは悔しそうに唇を噛む。


「どうしてですか……未来への投資なのに」


ヘルムは苦笑する。


「今しか見えてねぇんだろ。十年後を見る余裕がねぇ」


ベレは静かに窓の外を見つめた。


「会社はまた作れる。工場も建て直せる。でも……人を育てるには何年も掛かるのに」


その翌日。

ウス・ライの記事が新聞へ掲載された。

見出しは大きく書かれていた。


『共和国技術者保護計画 政府が却下』


記事にはこう記されていた。


「ヴィーダーベレ議員は、倒産した企業の技術者を工業学校や国営工場へ受け入れ、技術を次世代へ継承する計画を政府へ提出した」


「しかし政府は財源不足を理由に採用を見送った」


ウス・ライは社説で続ける。


「会社は倒産しても再び作れる。工場も建て直せる。だが、一人前の技術者を育てるには何年もの歳月が必要だ」


「その技術を失えば、共和国は未来まで失うことになる。この計画は失業対策ではない。共和国の未来を守るための計画書だった。」


記事を読み終えた編集長が静かに言う。


「惜しいですね」


ウス・ライは窓の外を眺めながら答えた。


「歴史ってのはな。後になってから、『あの時やっておけば良かった』って話ばかりなんだ」


翌朝。

その記事は共和国中へ広がった。


工場で働く職人たち。工業学校の生徒たち。

町工場の経営者たち。誰もが同じ言葉に目を止める。


「技術者を失ってはいけない」


その言葉は、静かに、しかし確実に人々の心へ刻まれていった。

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