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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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緊急経済会議

世界恐慌が共和国へ広がり始めてから数日後。

党本部。

大会議室には十人の議員と各分野の政策スタッフが集まっていた。


部屋の空気は重い。机の上には銀行の報告書。


工場の休業一覧。

輸出停止の資料。

失業者数の推移。


どれも暗い数字ばかりだった。

私は静かに立ち上がる。


「皆さん」


会議室が静まり返る。


「今、共和国に必要なのは恐慌対策です」


全員が真剣な表情になる。

私は黒板へ一つずつ書いていく。


国家備蓄

公共事業

工業学校

農業機械


書き終えると振り返った。


「全部、今まで私達が準備してきたことです」


ルマルが頷く。


「工業学校は技術者を育てる」


農業会社出身の議員が続ける。


「農業機械は食料生産を守る」


ヘルムも腕を組む。


「公共事業なら失業者も雇える」


ラインが資料をめくる。


「国家備蓄があれば、急な不足にも対応できます」


私は静かに微笑んだ。


「全部つながっていたのですね」


「その時は別々に考えていたけど。今なら分かる。全部、国を守る政策だった」


しかし、その笑顔はすぐに消えた。

私は黒板を見つめたまま、小さく呟く。


「……と言っても、全てが遅すぎた」


部屋が静まり返る。

私は力なく椅子へ腰を下ろす。


「もし……私に、もっと権力があれば……」


誰にも聞かせるつもりのない独り言だった。

しかし、その言葉をラインとヘルムは聞き逃さなかった。


ラインは静かにベレを見つめる。

確かに……もし、お嬢様に権力があったなら?


領地で行ってきた改革。

道路整備。学校建設。備蓄。工業育成。

農業改革。

それらを国全体で再現していた可能性は高い。


もし……半年早く動けていたら?


国家備蓄も。工業学校も。農業機械も。


もっと広がっていたかもしれない。

今の政府より、少しは被害を抑えられたかもしれない。


だが現実は違う。お嬢様、は一議員だった。


権力はない。


官僚へ頭を下げ。企業へ何度も足を運び。商工会議所を説得し。町工場へ通い続けた。


そうしてようやく形になったのは、工業学校。

農業機械。

そして、わずかな共和国製の輸出だった。


ラインは静かに拳を握る。

特に輸出……あと半年早く軌道に乗っていたら、もっと多くの企業が生き残れたかもしれない。


ヘルムが沈黙を破る。


「過去を悔やんでも始まらねぇ」


ベレはゆっくり顔を上げた。

ヘルムは真っ直ぐベレを見る。


「お前に権力が無かったのは事実だ。だが、何もしなかった訳じゃねぇ。今ある工業学校も、農業機械も、共和国製も全部、お前が走り回って作ったもんだ」


ルマルも優しく頷いた。


「今は前を向きましょう。まだ守れるものがあります」


ベレは静かに深呼吸した。

そして立ち上がる。


「そうね。まだ終わってない。今できることを、一つずつやりましょう」


その瞳には、再び力が戻っていた。

恐慌は始まったばかり。

共和国にとって、本当の戦いはこれからだった。

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