国家備蓄計画
世界地図を見た翌日。
党本部。ベレは一人、机に肘をつきながら考え込んでいた。
「うーむ……」
ラインがコーヒーを置く。
「珍しいですね。昨日からずっと悩んでいますが」
私は顔を上げる。
「もし……世界恐慌が起きて、世界中の物流が止まったら?」
部屋が静まり返る。
ヘルムが腕を組む。
「急な話だな」
私は世界地図を広げた。
「港が止まる、船が来ない、輸入も輸出も止まる。そんなことになったら、国はどうなるの?」
ルマルは少し考えて答えた。
「食料や資源が不足しますね」
私は頷く。
「だから備蓄が必要なの」
黒板へ書き始める。
・穀物備蓄
・石炭備蓄
・鉄鋼備蓄
・医薬品備蓄
「危機が来てから集めても遅い。平和な時に少しずつ備える」
ヘルムは感心したように笑う。
「領地でもやってたな」
私は苦笑した。
「そうなのよね。でも今回は村じゃない。国なの国レベルとなると……かなりのお金も倉庫も必要になる」
ルマルも腕を組む。
「一議員で進めるには、あまりにも規模が大き過ぎます」
私は椅子にもたれながら天井を見上げた。
「うーん……やっぱり無理かな」
しばらく沈黙が流れる。
その時だった。
私はふと顔を上げる。
「待ってそもそも……うちの国って、何が採れるの?」
ライン達は顔を見合わせる。
「えっ?」
私は地図を見ながら続ける。
「石炭は?鉄鉱石は?穀物は?木材は?石油はあるの?どれくらい自給できるの?」
誰もすぐには答えられなかった。
ヘルムが苦笑する。
「そこからか」
私は真剣な表情で頷く。
「備蓄を考える前に何を持っている国なのか知らなきゃ」
ルマルも納得したように微笑んだ。
「その通りですね。まずは共和国の資源調査から始めましょう」
私は手帳を開き、新しい項目を書き加える。
『共和国資源調査』
・鉱山
・炭鉱
・農地
・森林
「全部調べたい。自分の国を知らないで、未来なんて考えられないもの」
ヘルムは笑いながら帽子を被る。
「面白くなってきたな。今度は国そのものを調べる旅か」
私は立ち上がり、大きく頷いた。
「ええ。まずは共和国を知ること。その上で、足りないものを考えましょう」
窓の外には、平和な街並みが広がっていた。
しかしベレの視線は、その先にある未来を見据えていた。
危機は、いつ訪れるか分からない。
だからこそ、その日から共和国全土を調べる、新たな視察計画が静かに動き始めるのだった。




