共和国製、海を渡る
ある日の朝。
商工会議所の担当者が、満面の笑みで党本部へ飛び込んできた。
「ベレ議員!売れました!」
私は首を傾げる。
「何がです?」
担当者は興奮を抑えきれない様子だった。
「共和国製トースターです!海外への試験輸出分が、すべて完売しました!」
私は思わず立ち上がる。
「本当に!?」
担当者は何度も頷いた。
「数量はまだ少ないです!ですが、初めて海外で共和国製の商品が売れました!」
部屋中に拍手が響く。
ラインも嬉しそうに微笑む。
「おめでとうございます」
ルマルも静かに頷く。
「これは大きな一歩ですね」
私は嬉しそうに箱に刻まれた『共和国製』の文字を見つめた。
「品質が認められたのね。価格だけじゃない。ちゃんと品質を見て買ってもらえた」
担当者は資料を広げる。
「海外の商社からも追加注文の問い合わせが来ています」
私は目を輝かせた。
「まだまだ少ないけど……初実績ね!これからどんどん新商品を作って、たくさん売りまくらないと!」
ヘルムは思わず吹き出した。
「売りまくるって……」
私は笑顔で続ける。
「外貨を稼げば工場も増える!仕事も増える!技術者も育つ!全部つながるもの!」
ルマルも苦笑しながら頷く。
「その考え方は、もう政治家というより経営者ですね」
私は照れ笑いを浮かべた。
「国も会社も、働く人が元気じゃないと大きくなれないもの」
その日の夕方。
新聞社。ウス・ライは記事を書きながら、小さく笑っていた。
「まったく……またやりやがった」
編集長が覗き込む。
「今回は何です?」
ウス・ライはペンを止めずに答える。
「共和国製の初輸出。数量は少ねぇ。だが、一番大事なのは売れたって事実だ」
編集長も頷く。
「確かに」
ウス・ライは窓の外を眺めながら呟く。
「しかし……他の議員は何やってんだ?視察して、学校作って、農業改革やって、工場まで動かして、挙げ句の果てには輸出まで始めやがった」
苦笑しながら原稿を書く。
「見てると物足りないどころか……他の議員、いらねぇんじゃねぇかと思っちまう」
編集長が思わず笑う。
「書き過ぎじゃないですか?」
ウス・ライも笑った。
「いや。半分本気だ」
そして最後の一文を書き加える。
『この少女は政治家にならなくても、一人の経営者として十分成功していただろう。しかし彼女は利益ではなく、共和国そのものを豊かにする道を選んだ。だからこそ、多くの国民は彼女を支持するのだ。』
翌朝。
その記事は共和国中へ届けられた。
工場では職人たちが笑顔になり、
商店では店主が新聞を掲げ、港では新たな輸出の準備が始まる。
小さなトースター一台から始まった「共和国製」は、この日、確かに海を渡り、新たな未来への第一歩を刻んだ。




