初めての外交使節
党本部へ一通の封筒が届けられた。
ラインが不思議そうな顔で封筒を見つめる。
「お嬢様。招待状です」
私は首を傾げた。
「招待状?」
差出人を見る。
メリカ国大使館
「……え?」
私は思わず二度見した。
「私に?一議員の私に?」
ラインも封筒を見つめながら頷く。
「どうやら、そのようです」
封を開ける。
中には丁寧な招待状が入っていた。
『ヴィーダーベレ議員を、大使館へご招待申し上げます』
私は何度も読み返す。
「何で?私、大統領でも首相でも外務大臣でもないわよ?」
そこへヘルムが部屋へ入ってきた。
「どうした?」
私は招待状を差し出した。
「これ」
ヘルムは一目見るなり笑った。
「ほぅ〜来たか」
私は驚く。
「知ってたんですか?」
ヘルムは椅子へ座る。
「何となくな。お前の実力が、向こうにも認められ始めたってことさ」
私は首を傾げる。
「でも、一議員よ?政府じゃないわ」
ヘルムは笑う。
「外交ってのは、政府同士だけじゃねぇ。将来、国を動かすかもしれねぇ人物とも会う。それも外交だ」
ルマルも静かに頷いた。
「工業学校、農業改革、共和国製、どれも海外でも話題になっているのでしょう」
私は少し緊張してきた。
「外国の人と話すなんて初めて……」
ヘルムは苦笑する。
「議会で古株連中を相手にしてるんだ。今さら緊張する相手でもねぇよ」
部屋に笑いが広がった。
数日後。
メリカ国大使館。重厚な門をくぐると、美しい庭園が広がっていた。
「ようこそ、お越しくださいました」
大使館員が丁寧に迎える。
応接室へ案内されると、メリカ国大使が立ち上がり、笑顔で手を差し伸べた。
「ヴィーダーベレ議員。お会いできて光栄です」
私は少し緊張しながら握手を返す。
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」
大使は席に着くと微笑んだ。
「あなたのご活躍は耳にしております」
「工業学校、農業改革、そして共和国製、どれも興味深く拝見しております」
私は驚いた。
「海外でも……知られているんですか?」
大使は頷いた。
「もちろんです。我々外交官の仕事は、世界の動きを知ることです。共和国で何が起きているかも、毎日報告を受けています」
私は思わず窓の外を眺めた。
「そうなんだ……」
今まで私が見ていたのは、議会や国内だけだった。でも世界では、それを見ている国がある。
私は心の中で静かに呟いた。
「世界は……議会より広い」
大使は優しく笑った。
「その言葉に気付かれたなら、今日お招きした意味がありました」
帰り道。
馬車の窓から街並みを眺めながら、私は考えていた。
工場。農村。学校。議会。
そこだけを見ていれば良いと思っていた。
でも国は、世界の中の一つに過ぎない。
世界が共和国を見ているように、共和国も世界を見なければならない。
党本部へ戻ると、ヘルムが待っていた。
「どうだった?」
私は笑顔で答えた。
「勉強になったわ。私達が思っている以上に、世界は共和国を見てる」
ヘルムは満足そうに頷いた。
「その一歩が大事なんだ」
私は招待状を大切に机へしまいながら、小さく笑った。
「次は、世界のことも勉強しないとね」
内政だけを見つめていた少女議員は、この日初めて、自分の国が世界とつながっていることを実感したのだった。




