初めての党大会
党員が十人となって初めて迎える休日。
首都の公会堂には、朝早くから多くの人が集まっていた。
工場経営者。農家。教師。医師。学生。商人。
そして、『我が戦い』を読んだ支持者たち。
小さな会場は、開会前には満席となっていた。
控室。
私は緊張した様子で演説原稿を見つめていた。
「思ったより人が多いわね……」
ラインが笑顔で答える。
「皆さん、お嬢様の話を聞きたくて来られたんです」
ヘルムは腕を組みながら笑う。
「いつも通り話せばいい」
ルマルも頷く。
「飾る必要はありません」
私は深呼吸を一つした。
「そうね。現場で話してきたことを、そのまま伝えればいい」
やがて司会が開会を告げる。
「ただいまより、シュタール労働者党、第一回党大会を開催いたします」
大きな拍手が会場を包んだ。
私は演壇へ向かう。会場を見渡すと、多くの期待の眼差しがこちらを見ていた。
私は静かに口を開く。
「本日は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます」
拍手が起こる。私は続けた。
「私達の党は、まだ小さな政党です。議員も十人しかいません」
会場から小さな笑いが起きる。
私も笑顔になった。
「ですが、小さいからといって、できないとは思っていません」
「私達は工場を歩きました。学校を歩きました。病院を歩きました。農村も歩きました」
「現場へ行き、話を聞き、数字を集め、考え続けてきました」
会場は静まり返る。
私は一呼吸置いてから、力強く言った。
「私達は、政権を取るために集まったのではありません。共和国を立て直すために集まりました」
その言葉に、会場から自然と拍手が湧き起こる。私はさらに続ける。
「政権を取ることは目的ではありません。目的は、国民の暮らしを良くすることです。そのためなら、与党とも協力します。他の野党とも協力します。良い政策なら、誰の案でも賛成します」
企業の代表者たちも真剣な表情で聞いていた。
私は工業学校の構想にも触れる。
「技術者を育てること!農業を支えること!情報を公開すること!現場を知ること!」
「それが、これからの共和国を支える土台になります」
最後に私はゆっくりと頭を下げた。
「一歩ずつで構いません。皆さんと一緒に、この国を立て直していきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします」
大きな拍手が会場いっぱいに響いた。
演説が終わると、参加者たちは自然と立ち上がり、それぞれが交流を始める。
工場経営者は教師と話し合い、農家は商工会議所の担当者と名刺を交換する。
学生たちは工業学校について質問を重ねていた。
その様子を見たルマルが小さく笑う。
「これは党大会というより……」
ヘルムも周囲を見渡しながら頷く。
「共和国の未来を考える集まりだな」
私は会場を見渡し、静かに微笑んだ。
「それでいいんです。政治家だけで国は変えられません。国民みんなで考えて、初めて国は前へ進めます」
こうして、新共和国党の最初の党大会は、単なる政治集会ではなく、人と人をつなぐ新たな出発点となった。




