新しい仲間
数日後。党本部。
ラインが一枚の名刺を持って執務室へ入ってきた。
「お嬢様。お客様です」
私は書類から顔を上げる。
「視察の依頼?」
ラインは首を横に振る。
「いえ。現職の国会議員です」
「え?」
私は思わず立ち上がった。
「議員さん?」
応接室へ入ると、一人の男性議員が立ち上がり、深々と頭を下げた。
「突然の訪問、失礼いたします」
「私は、無所属のムイカと申します」
私は握手を交わしながら席へ着く。
「今日はどういったご用件でしょうか?」
その議員は少し緊張した様子で口を開いた。
「率直に申し上げます。私は、あなた方と一緒に政治がしたい」
部屋が静まり返る。
ルマルもヘルムも驚いた表情を浮かべる。
私は思わず聞き返した。
「私達と……ですか?」
議員は力強く頷いた。
「はい。私は十年以上議員をしています。ですが最近、自分が何のために政治家になったのか分からなくなっていました」
少し視線を落とす。
「他党内では派閥争い。選挙対策。足の引っ張り合い。政策の話より、自分達の立場を守る話ばかりです」
私は静かに耳を傾ける。
「そんな時に読んだのが、『我が戦い』でした」
机の上へ一冊の本を置く。
表紙には少し読み込まれた跡があった。
「現場を歩く、数字を見る、人の声を聞く、それを読んで思いました。私は、こういう政治がしたかったんだと」
私は少し照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます」
議員は続ける。
「だからお願いがあります。私を仲間に加えていただけませんか」
部屋は静まり返る。
私はすぐには答えず、ゆっくりと言葉を選んだ。
「一つだけ、お聞きしてもいいですか?」
「もちろんです」
「うちは小さな党です。派手な役職もありません。楽な道でもありません。それでも来てくださるんですか?」
議員は迷うことなく頷いた。
「はい。肩書きではなく、仕事がしたいんです」
私は笑顔になった。
「でしたら。こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言って手を差し出す。
議員も笑顔で、その手をしっかり握った。
「よろしくお願いいたします」
その様子を見ていたヘルムは腕を組みながら笑う。
「十人目か」
ルマルも静かに頷く。
「少しずつですが、確実に大きくなっていますね」
私は黒板へ向かい、党員数を書き換える。
9 → 10
その数字を見つめながら、小さく呟いた。
「まだ十人。でも、ようやく二桁ね」
新しく加わった議員が笑う。
「これから、もっと忙しくなりますよ」
私は力強く頷いた。
「望むところです」
「共和国を良くする仲間なら、何人でも歓迎します」
小さな政党だった彼らは、志に共感する仲間を少しずつ増やしながら、新たな一歩を踏み出していくのだった。




