工業学校始動
数日後。
党本部には、商工会議所や企業から次々と手紙が届いていた。
「工業学校の件でご相談があります」
「うちも協力したい」
「旋盤なら提供できます」
「実習場所なら貸せます」
「講師として職人を派遣しましょう」
私は読みながら思わず笑みを浮かべた。
「思った以上の反応ね」
ルマルも手紙の束を見ながら頷く。
「本のおかげでしょう。企業側も、本気で人材不足に悩んでいたんです」
その日の午後。
党本部の会議室には、商工会議所と各企業の代表者が集まっていた。
私は黒板の前に立つ。
「皆さん、ご協力ありがとうございます」
企業の代表が口を開く。
「技術者が足りません。学校を作るなら、ぜひ協力したい」
別の代表も続く。
「機械なら提供できます。実習用の部品も出しましょう」
さらに別の企業は、
「卒業後の就職先として受け入れます」
と申し出た。
会議室は活気に包まれる。
私はしばらく話を聞いてから、ゆっくりと口を開いた。
「皆さん一つ提案があります」
部屋が静かになる。
私は共和国の地図を広げた。
「あちこちに小さな学校を作るよりもまずは一校。力を集中させませんか?」
企業の代表たちは顔を見合わせる。
私は続ける。
「先生も設備も機械も実習工場も全部を一か所へ集めるんです。中途半端な学校を何校も作るより、共和国一番の工業学校を一校作る方が、人も技術も育ちます」
商工会議所の会頭が頷いた。
「なるほど、技術や設備が分散しない」
ある工場主も腕を組みながら言う。
「企業同士で設備を共有できるな」
別の代表が笑った。
「うちの職人も講師として送り出せます」
話は一気に盛り上がっていく。
ルマルは静かに微笑んだ。
「これなら予算も抑えられますね」
私は頷いた。
「はい。まず成功例を一つ作る。その学校が軌道に乗れば、次の学校を作ればいい」
企業の代表者たちは次々と賛同した。
「賛成です!ぜひ参加させてください」
「共和国の未来のためなら協力します」
私は深く頭を下げる。
「ありがとうございます。技術者は、一日では育ちません。だからこそ、今始めることが十年後、二十年後の共和国を支えることになります」
会議が終わる頃には、一校目の工業学校設立に向けた準備委員会が発足していた。
ヘルムは帰り道、小さく笑う。
「お前の夢が、また一つ現実になりそうだな」
私は空を見上げながら答えた。
「私の夢じゃないわ!共和国の未来よ」
技術を学ぶ若者たちの姿は、まだ誰も見ていない。しかし、その第一歩は、確かに踏み出されていた。




