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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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新内閣との初会談

数日後。

党本部へ一通の招待状が届いた。

差出人は、新しく発足した共和国政府。

私は封を開き、小さく声を漏らす。


「新首相との会談?」


ヘルムが覗き込む。


「ほぉ。本当に呼ばれたか」


ルマルも微笑む。


「『我が戦い』の影響でしょう」


私は頷いた。


「行ってきます。少しでも共和国が前へ進むなら」


共和国政府庁舎。

応接室へ案内されると、新首相が立ち上がった。


「ヴィーダーベレ議員。お会いできて光栄です」


私は一礼する。


「こちらこそ」


首相は机の上に置かれた一冊の本を手に取る。

それは、出版されたばかりの『我が戦い』だった。


「読ませていただきました。非常に興味深い内容でした」


私は少し嬉しくなる。


「ありがとうございます」


首相は笑顔で本を掲げた。


「ぜひ、一枚。記念写真を」


「え?」


そのまま握手を交わす。


パシャッ。パシャッ。パシャパシャッ。


新聞記者達のフラッシュが何度も光る。


「こちらを向いてください!」


「もう一枚!握手をもう少し!」


私は言われるまま写真撮影に応じた。

十分ほどして撮影が終わる。

ようやく椅子へ腰を下ろす。

私は資料を取り出した。


「それで、経済についてですが──」


すると首相の秘書が静かに近付いてきた。


「申し訳ございません」


「次の予定のお時間です」


首相は立ち上がり、申し訳なさそうな笑顔を浮かべる。


「今日はお忙しい中、ありがとうございました。また機会がありましたら」


そう言って再び握手を求められる。


「は、はい……」


そのまま会談は終わった。

経済の話は、一言もすることなく。


党本部へ戻る。

扉を開けると、ヘルム達が待っていた。


「おう!どうだった?」


私はソファへ倒れ込むように座る。


「はぁ〜……」


ヘルムが苦笑する。


「何だ?会談は?」


私は机へ一冊の『我が戦い』を置いた。


「私の本を片手に握手。写真をパシャパシャ撮られて、それで終わり」


部屋が静まり返る。

ヘルムが聞き返す。


「……はぁ?経済の話は?」


私は首を横へ振る。


「一つも」


ルマルも驚いた表情を浮かべる。


「一時間もあったんじゃ?」


「ほとんど写真撮影。残りは挨拶」


私は深くため息をついた。


「どうやら話をする気は、最初からなかったみたい」


ラインが首を傾げる。


「では、何のために?」


私は少し考えてから答えた。


「たぶん……『私とも話していますよ』っていうアピールだけ新聞に載せたかったんでしょうね」


ヘルムは鼻で笑った。


「政治家らしい」


私は窓の外を眺める。


「国を立て直す気があるなら写真より先に、経済の話をするはずだもの」


部屋に静かな空気が流れる。

私は小さく呟いた。


「この内閣も……」


少し間を置く。


「長くはないわ」


ルマルが理由を尋ねる。


「どうしてそう思います?」


私はゆっくり答えた。


「国民が困っている時に中身より見た目を優先する。それでは何も変わらない、時間だけが過ぎていく」


ヘルムは腕を組みながら頷いた。


「なるほどな」


私は机の上の資料を閉じる。


「はぁ〜これじゃ、いくら話しても時間の無駄……かな」


しかしルマルは静かに首を横へ振った。


「無駄ではありません」


私は顔を上げる。


「え?少なくとも向こうは、お前を無視できなくなってると思います。次に呼ばれる時は、本当に話を聞く時」


私は少しだけ笑った。


「そうだといいんだけどね」


窓の外では、新しい内閣を歓迎する旗が風に揺れていた。

その旗が、いつまで掲げられているのか。

ベレは静かに、その行く末を見つめていた。

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