政府からの招待
ある日の朝。
党本部へ一通の封書が届いた。
差出人は共和国政府。
私は首を傾げながら封を開ける。
「政府から?」
中には一枚の招待状が入っていた。
『ヴィーダーベレ議員へ』
経済政策について、ご意見を伺いたく存じます。
私は何度も読み返した。
「酒場の件じゃない?」
ルマルも手紙を覗き込む。
「違うな。経済だ」
ヘルムは腕を組みながら笑う。
「ようやく能力を認め始めたか」
私は少し考えた。
「行きます。話を聞きたいと言うなら、断る理由はありません」
数日後。
共和国政府庁舎。
会議室には数人の大臣や官僚が集まっていた。
以前のような敵意は感じられない。
財務省の官僚が口を開く。
「ヴィーダーベレ議員。今日はお越しいただき、ありがとうございます」
私は軽く頭を下げる。
「こちらこそ」
一人の大臣が資料を見ながら言った。
「あなたは議員になって最初に財務資料を求めました。現場も歩いている。率直な意見を聞かせていただきたい」
私は地図を広げる。
「まず財政です。紙幣発行量を管理すること財政資料を国民へ公開すること、そして工業と農業を同時に育てること」
次々と説明していく。
官僚達は真剣にメモを取っていた。
一時間。二時間。議論は続いた。
最後に私は静かに口を開いた。
「ですが」
部屋が静まり返る。
「一番気になっていることがあります」
大臣達が私を見る。
「ルー地方です。共和国の工業の中心でした。占領されたにもかかわらず、政府は十分な説明も、抗議もできていません」
誰も答えない。私は続けた。
「国民は不安です。何が起きたのか?これからどうするのか?その説明だけでも必要ではありませんか」
会議室は重い空気に包まれた。
やがて一人の大臣が静かに言った。
「……ご意見として承ります」
その言葉だけだった。
三日後。
朝刊の号外が首都中を駆け巡る。
『内閣総辞職』
『現内閣、倒れる』
党本部でも皆が新聞を囲んでいた。
ヘルムは新聞を畳む。
「終わったな」
ルマルも苦笑する。
「まさか、ここまで早いとは」
私は新聞を見つめたまま、小さく息を吐く。
「はぁ〜これじゃいくら話しても時間の無駄……かな」
ルマルは首を横に振る。
「無駄ではありません」
私は顔を上げる。
「え?」
「話は残る資料も残る聞いていた官僚も残る。内閣は変わっても、国そのものが消えるわけじゃない」
ヘルムも頷いた。
「相手が変わるなら、また話せばいい」
私は少し考え、やがて小さく笑った。
「そうね。共和国を変えるって、一つの内閣を相手にすることじゃないもの」
私は新しい手帳を開き、一行だけ書き加えた。
『相手が変わっても、目指す未来は変わらない』
そう呟くと、私は次の一歩を踏み出す準備を始めた。




