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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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静かな駆け引き

首都。共和国政府庁舎。


重苦しい空気が流れる会議室には、法務大臣、内務大臣、警察長官、そして数名の高官が集まっていた。


机の中央には一枚の新聞。

見出しは大きく、


『ヴィーダーベレ議員の勾留は長過ぎないか』


ウス・ライの社説だった。

法務大臣が新聞を机へ置く。


「……世論が動き始めています」


内務大臣は腕を組む。


「地方紙まで取り上げ始めました」


警察長官も難しい表情を浮かべる。


「拘束理由について問い合わせも増えています」


しばらく沈黙が続いた。

やがて一人の高官が口を開く。


「もう釈放してもいいのではありませんか」


しかし、別の高官が首を横へ振る。


「いや」


「今釈放すれば英雄になります」


部屋が静まり返る。


「酒場で騒ぎを起こした議員」


その印象は、すでに薄れ始めていた。

代わりに広がっているのは、


『政府に長く拘束されている十五歳の議員』


という印象だった。内務大臣が静かに言う。


「しかし、このまま長く拘束すれば政府批判が強まる」


法務大臣も頷く。


「法的にも難しい状況です。起訴するには証拠が弱い」


「だからといって、すぐ釈放すれば世論は『政府が折れた』と受け取るでしょう」


誰も答えられなかった。

これはもう法律だけの問題ではない。

政治の問題だった。警察長官が口を開く。


「現場としては、これ以上拘束する理由は乏しいと考えています。本人も牢内で騒ぐことなく、読書や執筆を続けています。看守とのトラブルもありません」


一人の高官が苦笑する。


「牢屋で本を書いているそうですね」


別の者も肩をすくめる。


「差し入れで机や本棚まで届いているとか」


会議室に小さな笑いが起きる。

しかし、すぐに空気は元へ戻った。

内務大臣が地図を見ながら呟く。


「支持率も少し上がっている。酒場事件で終わると思っていたが……」


法務大臣は新聞を見つめる。


「ウス・ライの記事も効いています。世論は『発砲』ではなく『勾留』へ関心が移り始めた」


警察長官は静かに言った。


「つまり。今、一番困っているのは彼女ではなく……」


誰も続きを言わない。

全員が同じことを考えていた。


政府だった。


法務大臣は深く息を吐く。


「急いでも駄目、引き延ばしても駄目。さて……どうすれば、一番傷が浅く済むでしょうか」


誰もすぐには答えられなかった。


静かな会議室には、時計の針だけが規則正しく時を刻んでいる。


その頃、牢屋の中では、当のベレが新しい本を開き、政策ノートへ静かに書き込みを続けていた。私を巡って政府が頭を悩ませていることなど、知る由もなく。

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