静かな反省
夜。牢屋の中。
昼間の賑やかさとは違い、静かな時間が流れていた。机の上には読みかけの本。
隣には、少しずつ厚みを増してきた政策ノート。
私はペンを置き、窓から見える夜空を眺める。
「……」
酒場での出来事を思い返す。
選挙へ行ってほしい。
国に関心を持ってほしい。
政府は国民へ説明するべきだ。
今思い返しても、伝えたかったことは変わらない。
私は小さく呟いた。
「伝えたいことは……」
少し間を置く。
「間違ってなかった」
静かな声が牢屋へ響く。
「でも……」
私は苦笑した。
「伝え方は間違えた」
拳銃。お酒。勢い任せの演説。
もっと冷静に話せば、違う形で伝えられたはずだった。
私はノートを開き、一行だけ書き加える。
『正しい考えでも、伝え方を間違えれば、人は耳を貸さない』
その一文を書き終えた時だった。
看守が新聞を差し入れる。
「今日の朝刊です」
私は受け取り、一面を見る。
そこには、またウス・ライの記事が載っていた。
『ヴィーダーベレ議員の勾留は長過ぎないか』
社説だった。
私は静かに読み始める。
「酒場で発砲した行為は処分されるべきである。しかし、それとこれとは別問題だ」
「ヴィーダーベレ議員は、いったい何の容疑で、これほど長く勾留されているのか」
「正式な説明はない」
「弁護士との接見も確認できていない」
「法は誰に対しても公平でなければならない」
「もし、新しい芽を潰すための圧力であるならば、それは共和国の未来を閉ざすことになる」
「我々新聞は、政府へ説明を求める」
私は新聞を閉じた。
「……ウスさん」
思わず笑みがこぼれる。
「記者らしいわね」
その頃。
街でも社説は大きな話題になっていた。
「確かに長くないか?」
「もう十分反省してるだろ」
「何で出てこないんだ?」
「政府は説明すべきだ」
少しずつ世論の矛先は、ベレ本人ではなく、政府の対応へ向き始めていた。
牢屋の中では、が新聞を読み終え、静かに頷く。
「世論が動き始めたな」
私は小さく息を吐いた。
「私は私でやることを続けるだけ」
そう言って再び政策ノートを開く。
外では新聞が世論を動かし。
内では一冊のノートが未来を描いていく。
静かな夜の中、ベレはもう一度ペンを握り、新たな一ページを書き始めるのだった。




