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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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看守との雑談

勾留生活も一週間が過ぎた。

朝になると、看守がいつものように新聞を持ってくる。


「議員さん。今日の新聞だ」


「ありがとうございます」


私は新聞を受け取り、一面を眺める。

酒場での一件は少しずつ小さな記事になり始めていた。

代わりに、支持率や各地の反応が載っている。


「……あれ?」


私は目を丸くした。


「支持が少し上がってる?」


ヘルムも新聞を覗き込む。


「本当だ。酒場の件で下がると思ったが……」


看守が苦笑しながら話しかけてきた。


「議員さん」


「はい?」


「俺、選挙必ず行くぞ」


私は思わず顔を上げた。


「え?」


看守は少し照れくさそうに笑う。


「酒場で言ってただろ」


『文句を言う前に投票へ行け』って。


「あれ聞いてな。次からはちゃんと行こうと思った」


私は驚いたまま笑顔になる。


「ありがとうございます」


看守は頭をかいた。


「発砲は勘弁してくれ。でも、言ってることは間違ってなかった。応援してる」


そう言って持ち場へ戻っていった。

私はしばらく新聞を見つめる。


「まさか……」


ヘルムが微笑む。


「意外なところへ届いていたようだな」


私は静かに頷いた。


「伝え方は失敗したけど……想いだけは届いたのかもしれない」


ヘルムは腕を組む。


「お前は折れないな。普通なら、あれだけ騒ぎになれば落ち込む」


私は笑った。


「落ち込んでも国は変わらないもの」


ヘルムは感心したように頷く。


「大した十五歳だ」


新聞を畳みながら続ける。


「支持率も前より少し上がっている。問題は……そこまで大きくない、か」


私はホッと胸をなで下ろした。


その夜。

牢屋の明かりも消え、静寂だけが流れていた。

ヘルムは眠っていた。ふと目が覚める。


「……ん?」


身体が動かない。次の瞬間。

口を大きな手で塞がれた。


「!!」


なっ!?ここは牢屋だぞ!?警官も大勢いるはずだ!まさか……警官の誰か!?


耳元で低い声がした。


「騒ぐな」


どこか聞き覚えのある声だった。


「私の大切な娘に怪我をさせたら……分かってるな?」


ヘルムの背中に冷や汗が流れる。

この声……まさかグラウベ!?

ヘルムの血の気が引いた。


嘘だろ……ラインに確認させたんだぞ!

領地にいるはずじゃなかったのか!?


静かに笑う。


「確認というものは時々、当てにならない」


ヘルムは必死に何か言おうとする。

しかし声にならない。


「娘は政治の世界を知らん。だから、お前達が守れ……それだけだ」


ヘルムは必死に頷いた。

その瞬間。張り詰めていた緊張が一気に切れた。視界が暗くなる。


「……あ」


そのまま意識を失った。


翌朝。

目を覚ましたヘルムは、ぼんやりと天井を見つめた。私は隣で首を傾げる。


「おはようございます……顔色悪いですよ?」


ヘルムは青ざめた顔のまま小さく呟く。


「……昨日、夢を見たんだ」


牢屋の隅では、看守が不思議そうな顔でこちらを見ていた。

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