牢屋の朝
「うぅ……」
身体中が重い。
「いたた……」
首も肩も痛い。ゆっくり目を開ける。
「……ん?」
見慣れない天井だった。
石造り。小さな窓。鉄格子。
私はぼんやりと天井を見つめる。
「んー?また転生してしまったのかしら……?」
その時だった。
「よぉ、ちびっ子」
聞き慣れた声がする。
私はゆっくり首を向けた。
「ん?ヘルムさん、おはよう。ここ何処?秘密基地?」
ヘルムは何とも言えない表情を浮かべる。
「……お前覚えてないのか?」
私は首を傾げた。
「ん?私はベレ。ちゃんと覚えてるわよ」
ヘルムは額へ手を当てる。
「いや……そうじゃなくて……」
私は身体を起こそうとするけど眠い。
「今何時?まだ眠い……」
ヘルムはため息をついた。
「もう九時だ」
「九時!?」
私は飛び起きた。
「仕事!って……」
辺りを見回す。
石の壁。鉄格子。ん?鉄格子?木のベンチ?
「……ここ何処よ?」
ヘルムは少し間を置いて答えた。
「牢屋でございます」
「……」
「…………」
「なっ!?」
私は勢いよく立ち上がる。
「ヘルムさん!何したのよ!?」
ヘルムも思わず立ち上がる。
「俺じゃねぇ!お前だ!!」
「はぁ?」
「『はぁ?』じゃねぇ!」
思わず声が大きくなる。
「昨日の記憶!どこまで覚えてる!?」
私は腕を組んで考え込む。
「えーっと……パブへ行って、美味しいご飯食べて」
「……」
「それ以外は?」
「何も覚えてないなぁ?」
ヘルムは天井を見上げた。
「……そうでございますか」
私は不思議そうな顔をする。
「だから!何があったのよ!」
そこへ牢番が笑いを堪えながら近付いてくる。
「起きたか、お嬢ちゃん」
私は慌てて鉄格子へ駆け寄った。
「すみません!何で私、ここにいるんですか!?」
牢番は肩を震わせながら答える。
「いやぁ……昨夜は大変だったぞ」
ヘルムは両手で顔を覆った。
「頼むから……俺に説明させてくれ」
私はますます混乱する。
「えぇ!?私、何したの!?」
ヘルムは深く息を吸い、静かに言った。
「全部話す……ただし笑うなよ?」
私は真剣な顔で頷く。
「笑わないわ」
ヘルムは小さく呟いた。
「……たぶん、お前だけはな」
牢番はついに吹き出し、大笑いを始める。
一方の私は、状況がまったく分からず首を傾げるしかなかった。
昨日の夜、一体何が起きたのか。
その答えは、まだ誰も語っていなかった。




