未来を育てる学校
翌日。
商工会議所では、前日のブランド会議に続いて工業関係者との意見交換会が開かれていた。
工場長。技術者。商人。
そして各企業の代表者が顔を揃えている。
私は昨日まとめた資料を机へ広げた。
「昨日は製品のお話でした。今日は人のお話を聞かせてください」
すると、真っ先に手が挙がる。
「技術者です」
大手機械工場の社長だった。
「何より技術者が足りません」
別の工場長も頷く。
「設備は増やせます。工場も建てられます。ですが、それを扱える人がいません」
鉄鋼会社の代表も苦笑した。
「若い人材は入ってきます」
「ですが一人前になるまで十年近く掛かる。教える側も不足しています」
私は手帳へ書き込む。
『技術者不足』
『指導者不足』
『育成期間が長い』
ルマルが静かに私を見る。
「やはり昨日の話につながりますね」
私は頷いた。
「ええ」
しばらく考え込み、小さく呟く。
「これから工業には、もっと力を入れることになると思う」
部屋が静かになる。
「だったら」
私は立ち上がった。
「学校ね」
工場長達が顔を見合わせる。
「学校ですか?」
「ええ」
「技術を学校で学ぶ場所を作ります」
「基礎は学校、実践は工場、企業と学校が協力して人材を育てるんです」
技術者の一人が驚いた表情を浮かべる。
「そんな学校は聞いたことがありません」
私は笑顔になる。
「私の領地では、似たようなことをやってきました。規模は小さいですが、成果は出ています。共和国全体でも応用できるはずです」
ヘルムが腕を組みながら笑う。
「また領地の成功例か」
私は苦笑した。
「成功したことは、どんどん広げるべきでしょう?」
「その通りだ」
会場からも笑いが起こる。
しかし私はすぐ真面目な表情へ戻った。
「もちろん問題もあります」
ルマルが続ける。
「予算ですね」
私はため息をつく。
「そう」
「学校を建てるにも教師を育てるにも設備を揃えるにもお金が掛かる。結局は予算次第」
部屋が静まり返る。
しばらくして、一人の工場長が口を開いた。
「議員、もし学校を作るなら私達企業も協力しましょう」
別の工場長も続く。
「実習なら工場を使ってください。卒業したら、そのまま雇います」
私は思わず目を見開いた。
「本当に?」
「ええ。技術者不足は、我々自身の問題でもありますから」
私は深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
そして黒板へ大きく書く。
『工業学校構想』
その文字を見つめながら、私は静かに言った。
「技術者を早く育てる!そうすれば、国の足腰は自然と強くなる。工場も育つ産業も育つそして共和国そのものも強くなる」
ルマルは穏やかに微笑む。
「人材育成こそ、一番時間が掛かる投資です」
私は力強く頷いた。
「だからこそ始めるなら、一日でも早い方がいい」
窓の外では、多くの若者達が行き交っていた。
その中から未来の技術者が生まれる日を思い描きながら、ベレは新たな構想を胸に刻むのだった。




