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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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暮らしを変える発想

数日後。

私はルマルと共に、首都の商工会議所を訪れていた。

応接室には技術者や商人が数名集まっている。

私は早速、本題を切り出した。


「今日は、少し変わった質問があります」


商工会議所の職員が笑う。


「ヴィーダーベレ議員の質問は、いつも変わっていますからね」


部屋に笑いが広がる。

私は手帳を開いた。


「まず確認したいのですがラジオはありますか?」


技術者が頷く。


「あります。軍用から始まり、現在は一部の企業でも使われています。一般家庭には高価すぎますが」


私はメモを取る。


「扇風機は?」


「大型のものなら工場や店舗で使われています」


「家庭用は、ほとんどありません」


「掃除機は?」


「ホテルや役所向けならあります」


「やはり大型ですね」


私は頷きながら次を尋ねる。


「冷蔵庫は?」


技術者は資料をめくる。


「大型冷蔵庫ならあります。食肉工場や港、市場などで使われています。ですが家庭向けはありません」


私は思わず小さく笑った。


「なるほど。あと一歩なのね」


ルマルも興味深そうに聞いている。

私は最後に口を開いた。


「では……トースターは?」


部屋が静まり返る。

技術者達は顔を見合わせた。


「初めて聞く名前です」


私はパンを焼くための箱型の道具を簡単に説明する。


「電気や熱で、短時間に両面を焼く道具です」


技術者達は一斉にメモを取り始めた。


「面白い……仕組みは単純そうですね」


私は少し安心した。


「では最後、電子レンジ」


今度は全員が首を傾げる。


「電子……?どういう原理ですか?」


「えっと……」


私は口を開いたものの、説明が止まる。

電磁波……マイクロ波……あれ?

前世では当たり前に使っていた。

でも仕組みまでは知らない。


私は苦笑した。


「……ごめんなさい。私も説明できません」


部屋に笑いが広がる。

技術者の一人が笑顔で言う。


「議員でも分からないことはありますよ」


私も笑った。


「ええ。これは宿題にします」


商談を終え、帰り道。

私はルマルへ話しかけた。


「思ったより、この国の技術は進んでいたわ」


ルマルも頷く。


「基礎技術はあります。足りないのは、小型化と量産でしょう」


私は歩きながら整理していく。


「大型のラジオはある。大型の扇風機もある。大型の掃除機もある。冷蔵庫も業務用はある」


「だったら」


私は立ち止まった。


「家庭用を作ればいい」


ルマルが微笑む。


「なるほど。一般家庭向けですね」


私は大きく頷いた。


「共和国の技術は悪くない。でも、お店や工場だけじゃなく。普通の家庭にも届けたい」


私は手帳へ大きく書いた。


『家庭用家電』


その下へ、四つの丸を付ける。


・ラジオ

・扇風機

・掃除機

・トースター


私は笑顔になる。


「まずは、この四つから始めましょう」


ルマルも穏やかに頷いた。


「暮らしが便利になれば、国も豊かになります」


私は商工会議所を振り返った。

共和国を変えるのは、大きな政策だけではない。

一つの便利な製品が、人々の暮らしを変えることもある。

そんな新しい可能性が、少しずつ形になろうとしていた。

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