共和国製
ルー地方。
工場見学も終盤に差しかかっていた。
試作品が並ぶ展示室へ案内される。
工具。歯車。ポンプ。蒸気機械。
どれも職人達が誇らしげに説明してくれた。
私は一つ一つ手に取りながら見て回る。
「精度は悪くないわね……」
ルマルが微笑む。
「共和国の工業技術は決して低くありません。問題は売り方です」
私は首を傾げる。
「売り方?」
工場長が苦笑する。
「安い物を作れば売れる。今は皆そう考えています」
私は少し考え込んだ。
「でも、それじゃ駄目ね」
皆の視線が私へ集まる。
私は試作品を机へ戻した。
「共和国ブランドを作りましょう」
「ブランド?」
聞き慣れない言葉に工場長が首を傾げる。
私はゆっくり説明する。
「例えば同じ時計でも安いから買う。ではなく。共和国製だから買う。そんな製品を目指すんです」
職人達は顔を見合わせる。
「品質で勝負……ですか」
「ええ。安さはいずれ真似されます。でも品質と信用は簡単には真似できません」
工場長は腕を組みながら頷いた。
「なるほど……面白い考えです」
帰り道の飛行機の中。
私は窓の外を眺めながら考えていた。
共和国製か……すると前世の記憶が次々と浮かんでくる。
テレビ。ラジオ。扇風機。冷蔵庫。掃除機。
洗濯機。
「うーん……」
思わず腕を組む。
ヘルムが笑う。
「また何か考えてる顔だな」
私は苦笑した。
「前世……こんな便利な物ないかなーと」
テレビは……流石にまだ無理ね。放送局。
電波網。受像機。
今の共和国では、どれも現実的ではない。
「でもラジオは?」
以前、軍用無線機を見た。
軍では既に実用化されている。
「扇風機は?冷蔵庫は?掃除機は?」
次々と疑問が浮かぶ。
私はルマルを見る。
「もうあるのかしら?」
ルマルは苦笑する。
「私も全部は知りませんし、聞いた事の無い言葉もありますね。専門家へ聞くのが一番でしょう」
私は手を打った。
「そうね!子どもの思いつきってことで聞いてみましょう」
ヘルムが笑う。
「誰にだ?」
私は笑顔で答えた。
「首都の商工会議所。技術者も商人も集まる場所でしょう?まずは、何があって何がないのか?そこから調べましょう」
ルマルも頷く。
「良い考えです。新しい物を作るには、まず現状を知ることですから」
私は窓の外へ目を向ける。
共和国には技術がある。
職人もいる。工場もある。
足りないのは、新しい発想と、それを形にする仕組みなのかもしれない。
「共和国製だから欲しい」
そんな未来を思い描きながら、飛行機は首都へ向かって飛び続けていた。




