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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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技術を守れ

ルー地方。


工場の見学を終えた私は、一人の年配の職人へ声を掛けた。

髪は白く、手には長年の仕事で刻まれた傷が無数に残っている。

いかにも熟練職人という風格だった。


「長く働いていらっしゃるんですか?」


職人は笑う。


「もう四十年になるかな。見習いから始めて、今じゃ若い連中を教える立場さ」


私は工場内を見回した。

若い職人は確かにいる。

しかし、その数は思ったより少ない。


「若い方は増えていますか?」


その瞬間、職人の笑顔が消えた。


「いや。むしろ減ってる」


私は首を傾げる。


「どうしてですか?」


職人は機械を優しく撫でながら答えた。


「一人前になるまで何年も掛かる。給料も最初は安い。だから途中で辞めちまう」


少し間を置いて続ける。


「それに戦争だ。腕の良い職人を何人も失った。帰ってきても怪我で工具を握れない奴もいる」


工場の中が静かになる。

職人は遠くを見るような目で呟いた。


「このままじゃ……技術が途絶えちまう」


私はその言葉を手帳へ書き留めた。


『技術の継承』


『後継者不足』


『熟練工の減少』


工場を出た後も、その言葉が頭から離れなかった。


窓の外には、夕日に染まる工場群が広がっている。私は腕を組みながら考え込んでいた。


「うーむ……」


ルマルが隣で微笑む。


「何か気になりますか?」


私は窓の外を見たまま答えた。


「技術者を育てる学校が必要ね」


ヘルムが振り向く。


「学校?」


「ええ」


「職人さん任せでは限界があるわ。基礎を学校で教えて工場で実習する。そうすれば、もっと早く技術者を育てられるかもしれない」


ルマルは感心したように頷く。


「なるほど技術教育ですか」


私は苦笑した。


「でも……これって、領地でやってきたことを、もっと大きくするだけなのよね」


領地でも、職人を育てるための教育は行ってきた。違うのは規模だけ。


共和国全体となれば、必要な学校も教師も桁違いになる。


私はため息をつく。


「問題は予算か……」


ルマルも静かに頷いた。


「学校を建てる。教師を集める。教材や設備も必要になります」


ヘルムが腕を組む。


「金だけじゃねぇ。卒業した連中を受け入れる工場も必要だな」


私は思わず笑った。


「考えることが増えてきたわね。でも……」


私はもう一度、窓の外の工場を見つめる。

煙突から立ち上る煙は、この国の未来そのものだった。


「技術は、一度失ったら取り戻すのに何十年も掛かる。だから今、守らなきゃ」


ルマルが静かに微笑む。


「それが、未来への投資ですね」


私は大きく頷いた。


「ええ。工場を守るんじゃない。技術を守るの」


その言葉とともに、共和国全体へ技術教育を広げるという新たな目標が、ベレの胸に刻まれた。

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