新聞は敵か?味方か?
翌朝。
共和国中へ配られた新聞の一面には、大きな見出しが躍っていた。
『財務資料公開を求める十五歳』
さらに、その下には続く。
『一部高級官僚、資料公開を拒絶か』
記事を書いたのはウス・ライだった。
記事は感情論ではない。
事実だけを積み重ねていた。
「国民の税金はどのように使われているのか?」
「資料公開を求める声は、今後さらに広がるだろう」
新聞は瞬く間に首都中へ広がった。
「何を隠している?」
「税金の使い道を知りたい」
街ではそんな会話が増えていく。
世論は少しずつ動き始めていた。
しかし、その一方で別の動きも始まっていた。
党本部の前。
「ラインさん」
男が笑顔で近付いてくる。
「フリー記者のローデンです。少しだけ、お話を」
ラインは無表情のまま答える。
「お断りします」
しかし翌日も。翌々日も。ローデンは現れた。
「ベレ議員は、本当に十五歳なんですか?卒業した年が合わないそうですね?領地でも調べさせてもらいました」
その言葉に、ラインの表情が僅かに変わった。
その夜。
ラインはウス・ライを訪ねた。
「ローデンという男を知っていますか?」
ウス・ライは眉をひそめる。
「ああ。ありゃ〜新聞記者じゃない。ゴシップ屋だ。有る事無い事を書いて金にする。相手が困れば困るほど喜ぶ」
ラインは静かに尋ねる。
「あちこち歩き回ってた。年齢が違うとか騒いでたな」
ラインは黙って立ち上がった。
深夜。人気のない川沿い。
ローデンは約束の場所へやって来た。
「本当に金になる話があるんですか?」
ラインは周囲を見渡した。
誰もいない。
「ある。お嬢様の話だ」
ローデンの目が輝く。
「詳しく聞かせてください」
ラインは静かに言う。
「お前は、どこまで調べた?」
ローデンは笑う。
「卒業記録。年齢。領地の教師。まだまだありますよ。明日の記事は大スクープです」
ラインは一度だけ目を閉じた。
……これ以上は駄目だ。
彼女の頭に浮かぶのは、グラウベの言葉だった。
「娘を守れ」
それだけだった。
ルガーが静かに抜かれる。
ローデンは、ようやく異変に気付く。
「お、おい……?」
パン。パン。パン。
夜の静寂に三発の銃声が響いた。
ローデンは崩れ落ちる。
ラインは無表情のまま帽子を被り直した。
「お嬢様の未来を壊す者は、私が排除する」
静かな川面が月明かりを映していた。




