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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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数字が語る真実

議会を終えた私達は、そのまま党本部へ戻ってきた。

机の上には財務省から借りた資料が山積みになっている。

私は八人の議員へ一冊ずつ資料を配った。


「今日は、皆さんへ共和国の現状を説明します」


黒板の前へ立ち、白いチョークを手に取る。

最初に大きく書いた。


『共和国が破綻する理由』


部屋が静まり返る。

私は一つずつ黒板へ書き込んでいく。


・税収の減少

・紙幣の大量発行

・国債の増加

・ハイパーインフレ

・通貨への信用喪失


さらに矢印を書き加える。


税収減少

紙幣を刷る

物価上昇

税収がさらに減る

また紙幣を刷る


「悪循環です」


私は振り返った。


「これを止めない限り、共和国は立ち直れません」


議員達は真剣な表情で黒板を見つめている。

医師が口を開いた。


「なるほど……」


教師も頷く。


「数字で見ると分かりやすいですね」


元軍人は腕を組む。


「確かに、このままでは持たん」


私は説明を続けた。財務省で見た数字。

国債残高。税収。紙幣発行量。

一つずつ整理していく。

一時間ほど経った頃。

私はチョークを置いた。


「以上です」


部屋は静まり返る。

しばらく沈黙が続いた後、一人の議員が手を挙げた。


「……それでどうするんです?」


別の議員も続く。


「原因は分かりました。ですが、解決方法は?」


私は言葉に詰まった。


「それは……」


分かっている。原因は見えた。

だが、具体的にどう直すのか。

国全体の経済を立て直した経験など、もちろんない。


私は苦笑する。


「そこが、一番難しいのよね……」


部屋には少し重い空気が流れた。

その時だった。


コンコン。


扉がノックされる。


「入るぞ」


聞き慣れた声だった。

ヘルムが部屋へ入ってくる。

その後ろには、一人の男性が立っていた。

四十代半ばほど。

眼鏡を掛け、落ち着いた雰囲気の人物だった。

ヘルムはその男の肩を軽く叩く。


「ほれ、挨拶しろ」


男性は一歩前へ出る。


「初めましてルマル・シハと申します。現在は銀行で働いております」


私は軽く頭を下げた。


「よろしくお願いします」


ヘルムは椅子へ腰掛ける。


「こいつとは昔な海軍会計局で一緒に働いてた」


ルマルは苦笑する。


「ヘルムさんは、細かい数字が苦手でしたから」


「うるせぇ」


ヘルムは笑いながら続けた。


「予算、決算、資金繰り、全部こいつが見てた。数字にはめちゃくちゃ細けぇ」


ルマルは照れくさそうに笑う。


「仕事でしたから」


私は思わず表情が明るくなる。


「銀行の方なんですね」


「はい」


「融資や企業会計を担当しております」


ヘルムは私を見る。


「ベレ、一人で抱え込むな」


私は顔を上げる。


「俺らは仲間だ!同じ方向を向いている。分からねぇことは、分かる奴に聞け。全部一人でやろうとするな」


部屋が静まり返る。

私はその言葉を胸の中でゆっくり噛み締めた。

領地では。ずっと私が考え、私が決め、私が動いてきた。

その癖が、まだ抜けていなかった。


私は小さく笑う。


「そうですね」


ルマルも優しく頷いた。


「経済は一人では動きません。だから銀行があり、企業があり、政府があります。皆で考えれば、必ず道は見つかります」


私は深く一礼した。


「ありがとうございます」


ヘルムは満足そうに笑う。


「その一言が聞きたかった」


私は改めて部屋を見渡した。

八人の議員。ヘルム。ライン。ヴィル。

そして、新たに加わったルマル。

いつの間にか、私は一人ではなくなっていた。黒板にはまだ大きく書かれた文字が残っている。


『共和国が破綻する理由』


私はチョークを手に取り、その下へ新しく書き加えた。


『共和国を立て直す方法』


「さあ、ここからは、皆さんと一緒に考えましょう」


その言葉に、全員が力強く頷いた。

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