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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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最初の質問

初登院の日。

共和国議事堂には朝早くから多くの議員が集まっていた。


廊下では名刺交換。握手。


「よろしくお願いします」


「今後とも」


そんな挨拶があちこちで交わされている。

私も七人の仲間と共に議場へ入った。


「緊張しますね」


若い議員の一人が小声で言う。

私は小さく頷いた。


「ええ。でも、やることは変わらないわ」


議場では、新しく当選した議員達の紹介が始まる。一人ずつ立ち上がり、短い挨拶をする。


「地域の発展のため尽力します」


「国民のため働きます」


「未来ある共和国を築きます」


立派な言葉が続く。

私は静かに聞いていた。

やがて司会者が言う。


「それでは、新任議員から質問があれば受け付けます」


一瞬、静かになる。

私はゆっくりと立ち上がった。

周囲の議員がこちらを見る。


「シュタール労働者党、ヴィーダーベレ議員」


私は一礼し、静かに口を開いた。


「質問があります」


「どうぞ」


私は財務省で見た資料を思い出しながら尋ねた。


「現在の貨幣供給量を教えてください」


その瞬間。

議場は水を打ったように静まり返った。

誰も口を開かない。

空気が止まったようだった。

一人の議員が小さく呟く。


「……いきなりそこを聞くのか」


別の議員も驚いた表情を浮かべる。


「普通は自己紹介だろう」


「まさか貨幣供給量とは……」


財務大臣も一瞬だけ言葉を失った。


「その質問は……」


わずかな間を置いて答える。


「確認の上、お答えします」


私は静かに頷いた。


「よろしくお願いします」


それだけだった。


傍聴席では、一人の男が必死に笑いをこらえていた。


新聞記者、ウス・ライである。

ははは……いきなりそれか?

心の中では大笑いしていた。

周囲の記者達もざわついている。


「貨幣供給量?」


「そんな質問を最初に?」


ウス・ライは手帳へ勢いよくペンを走らせる。


皆、薄々気付いている。この国の一番危ない部分に。でも誰も触れない。いや……触りたくないんだ。


紙幣を刷り続けた結果。止まらないインフレ。

信用を失った通貨。

議場にいる誰もが知っている。


しかし、それを真正面から議場で問い掛けた議員は、今までいなかった。


ウス・ライは思わず口元を緩める。


これは明日の一面だな。


議会が終わると、廊下では早速その話題でもちきりだった。


「あの十五歳……」


「いきなり財務へ切り込んだぞ」


「普通じゃないな」


「歓迎の挨拶も無しか」


ヘルムはその様子を見て豪快に笑う。


「はっはっは!らしいじゃねぇか」


私は少し首を傾げる。


「変なことを聞きましたか?」


ラインは苦笑する。


「変ではありません。ですが、一番答えにくい質問です」


ヴィルも頷く。


「皆さん、そこへ話を持っていきたくなかったのでしょう」


私は静かに議場を振り返った。


「でもそこを避けていても、共和国は立ち直れないもの」


その言葉を聞いたヘルムは満足そうに笑った。


「その調子だ!これから議会は退屈しなくなりそうだな」

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