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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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12/27

紙面が語るもの

新聞を読み始めて数日が経った。

ベッドの周囲には読み終えた新聞が積み上がっている。


最初は戦況ばかり追っていた。

だが途中で意味がないと気付いた。

戦時中の新聞など、どこの国も似たようなものだ。


勝利。前進。敵軍撃退。英雄の活躍。


そんな記事ばかりが並ぶ。

もちろん全てが嘘とは思わない。

だが全てを信用するほど愚かでもない。

私は別の場所を見ることにした。


広告欄。生活欄。経済記事。


そして紙面の隅に追いやられた小さな記事。

そちらの方が遥かに価値があった。


「やっぱり……」


私は一枚の新聞を閉じた。

見えてきたものがある。国内は疲弊している。


かなりの速度で石炭不足。鉄不足。

輸送遅延。生活物資の欠品。


新聞は直接そう書かない。

記事を並べていくと分かる。

物資不足に関する話題が徐々に増えている。


そして広告が減っている。


これは大きい。

私は古い新聞と新しい新聞を並べた。


半年前。紙面の三割近くを広告が占めている。


服飾店。食料品店。時計店。酒造会社。

鉄道会社。


様々な企業が広告を出していた。

しかし最近の新聞は違う。

広告欄が明らかに小さい。


数も減っている。


「余裕がないのね」


広告というのは余剰資金があるから出せる。

景気が悪化すれば真っ先に削られる。

つまり企業にも余裕がなくなっているということだ。


そして広告が減った場所に何が入ったか。


答えは簡単だった。

戦意高揚記事。兵士を讃える記事。

愛国心を訴える記事。献金募集。輸血募集。

軍への協力呼び掛け。


そんな内容ばかりになっている。

私は次の新聞を開いた。


そこには大きく、


『代用食で乗り切ろう!』


という記事が載っていた。

さらに別の日には、


『不足する小麦を補う工夫』


という特集。


他にも。豆を使った代替食品。

芋を利用した保存食。肉の代用品。


似たような記事が増えている。

私は紙面を指で叩いた。


「軍優先ね」


おそらく間違いない。

食料も。燃料も。鉄も。石炭も。

優先順位の高い場所へ送られている。


そして後回しにされた民間が不足を感じ始めている。戦争中の国家としては珍しくない。


むしろ当然だ。だが問題は、その状態が長引いていることだった。


短期間なら耐えられる。

だが長く続けば国民は疲弊する。


産業も弱る。経済も縮む。

そして不満が蓄積される。


私は窓の外へ視線を向けた。

この国の自給率は分からない。


輸入量も分からない。輸出量も分からない。


そんな数字は新聞には載らない。

載ったとしても信用できるか怪しい。

そもそも国家機密に近い情報だろう。

だが数字がなくても分かることはある。


人は嘘をつく。政府も嘘をつく。

新聞も嘘をつく。


だが現実は嘘をつかない。

広告の減少。代用品の記事。物資不足の増加。


それらは国家の疲弊を隠しきれていなかった。

私は新聞を閉じる。


そして小さく呟く。


「さて……」


問題は、この戦争がいつ始まって、どこまで続いているのか。


それがまだ見えていない。

だが少なくとも一つだけ確かなことがある。

この国は今、勝利の記事を書き続けながら。


確実に力を削られている。

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