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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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勝利の記事

翌日。私の部屋には新聞の山ができていた。


「本当に持ってきたのね……」


思わず苦笑する。

頼んだのは私だ。文句を言う資格はない。

それにしても量が多い。


「どれくらいありますか?」


「半年分ほどでございます」


侍女が答える。


半年。私は思わず新聞の山を見た。

かなりの量だ。だが今の私には時間がある。


歩けない。外へも出られない。

ならば読むだけだ。


「ありがとう」


「何かございましたらお呼びください」


侍女が部屋を出ていく。

私は新聞の山へ手を伸ばした。


まずは一番古いものから。

情報は時系列で追う方が理解しやすい。

私は最初の一部を広げる。

大きな見出しが飛び込んできた。


『我が帝国! 春季大攻勢!』


さらにその下。


『敵軍を圧倒! 各戦線で大勝利!』


私はしばらく紙面を見つめた。

そして小さく呟く。


「うん……」


嫌な予感しかしない。前世でも何度も見た。

戦時中の新聞だ。

どこの国も似たようなことを書く。


自国の勝利。敵軍の損害。英雄の活躍。

国民の団結。そして近い将来の勝利。


紙面の大半がそんな記事で埋まる。


「プロパガンダも含まれてそうね」


私は記事を読み進める。

敵軍の損害は詳しく書かれている。

自軍の損害は曖昧だ。

敵軍の撤退は強調される。

戦略的な目的については説明がない。

典型的だった。


「全部が嘘とは限らない」


むしろ大部分は事実だろう。

問題は何が書かれていないかだ。

私は新聞を閉じる。


外交官時代にも何度も経験した。


ある国の新聞だけ読めば、その国が勝っているように見える。

別の国の新聞を読めば、今度は相手が勝っているように見える。


そして実際には両方苦戦している。

そんなことは珍しくない。


「確認のしようがないのが厄介ね」


前世なら方法はいくらでもあった。


海外メディア。衛星画像。国際機関の報告書。

複数の情報源を比較できた。


だが今は違う。私はベッドの上だ。

使えるのは新聞だけ。

だからこそ慎重にならなければならない。


私は記事の内容ではなく、別の部分へ目を向けた。


日付。広告。鉄道の運行情報。

商品の価格。求人欄。死亡記事。小さな記事。


大見出しより、むしろこちらの方が価値がある。


「なるほど……」


物価が上がっている。


石炭不足。鉄不足。燃料不足。輸送の遅延。


そして増える戦死者。

勝利の記事とは裏腹に、紙面の隅々には戦争の疲弊が滲んでいた。


私は次の新聞を開く。


その次もさらにその次も。


勝利。勝利。勝利。


そして少しずつ小さくなる見出し。

増えていく物資不足の記事。

減っていく広告。

私は静かに息を吐いた。


「さて……」


まだ結論は出せない。

だが一つだけ確かなことがある。

この国は新聞が書くほど余裕のある状態ではない。


私は新たな新聞へ手を伸ばした。

本当に知りたいのは勝利ではない。

その裏側なのだから。

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