故郷の結果
夜明けが近づいていた。
党本部では、各地の開票結果がほぼ出そろい始めていた。
残るは、あとわずか。
その中には、私自身が立候補したシュタインベルク選挙区も含まれていた。
私は共和国の地図を静かに見つめる。
「最後は……私の故郷ね」
ヘルムも腕を組みながら頷く。
「ああ、一番待たせやがる」
ラインは落ち着かない様子で部屋を歩き回る。
ヴィルも腕時計を何度も見ていた。
「まだでしょうか……」
その頃。
シュタインベルク伯爵領でも、多くの人が眠らずに夜を過ごしていた。
役場には開票結果を待つ人々が集まり。
広場には焚き火が焚かれ。
市場の商人達も店を閉めた後、その場を離れようとはしない。
帰還兵。鍛冶職人。教師。農民。
難民村から新しく領民になった人々。
誰もが固唾を飲んで結果を待っていた。
屋敷でも同じだった。
母は何度も窓の外を眺める。
「まだかしら……」
ザンフトも落ち着かない様子で部屋の中を歩いている。
「お姉様、大丈夫ですよね?」
母は優しく微笑んだ。
「信じましょう」
一方、父グラウベだけは腕を組み、椅子へ座ったまま微動だにしない。
しかし、その指先だけが静かに肘掛けを叩いていた。
トン……トン……
長年父を知る執事は、小さく笑う。
旦那様も緊張していらっしゃる。
その時だった。
党本部。
カタカタカタ……
古い電報機が大きな音を立て始める。
通信係が勢いよく紙テープを受け取る。
部屋中が静まり返った。
誰も息をしない。
通信係はゆっくり紙を広げる。
「シュタインベルク選挙区……」
私は静かに立ち上がった。
通信係が大きく息を吸う。
「ヴィーダーベレ・フォン・シュタインベルク」
一瞬の静寂。
「当選です!」
その瞬間だった。
「やったー!」
「当選だ!」
「おめでとうございます!」
党本部は大歓声に包まれた。
ラインは思わず涙ぐみ、ヴィルと固く握手を交わす。
ヘルムは帽子を脱ぐと、大きく笑った。
「はっはっは!当然の結果だ!」
私はしばらく言葉が出なかった。
胸の奥が熱くなる。
皆のおかげだ。私一人じゃない。
その頃、領地でも伝令が馬を飛ばして屋敷へ駆け込んでいた。
「ご報告!お嬢様、ご当選です!」
屋敷中が歓声に包まれる。
ザンフトは飛び跳ねた。
「やったー!」
母は胸へ手を当て、静かに目を閉じる。
「良かった……」
父は静かに立ち上がった。
「そうか」
その一言だけだった。
だが、口元には小さな笑みが浮かんでいた。
執事が頭を下げる。
「おめでとうございます」
父はゆっくり窓の外を見つめる。
「これでようやくスタートラインだ」
遠く離れた首都。
私は夜明けの空を見上げていた。
朝日が少しずつ街を照らし始める。
長い夜は終わった。
そして今日、新しい一日とともに。
私の政治家としての人生も、静かに始まろうとしていた。




