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平和を望んだ少女は、戦争へ進む。 〜敗戦国の再建を目指した少女の誤算〜  作者:


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予想外の結果

夜は更け、時計は午前二時を回っていた。

党本部では誰も眠ろうとはしない。

古い電報機は休むことなく動き続けている。


カタカタカタ……


通信係が新しい紙テープを受け取った。


「北部第四選挙区!シュタール労働者党、逆転!」


部屋がざわつく。


「またか!」


ヘルムは地図へ新たな印を付けた。


「……ほぅ」


その数分後。


カタカタカタ……


「工業地区第二選挙区!シュタール労働者党、当選確実!二議席目です!」


拍手が起こる。

しかし、私は地図を見つめたままだった。


さらに。


「炭鉱地区!逆転!」


「港湾地区!接戦から優勢へ!」


「中央第六選挙区!当選確実!」


速報が届くたび、地図の赤い印が増えていく。

ラインが驚きを隠せない。


「こんなに……」


ヴィルも静かに呟く。


「支持が広がっています」


ヘルムは腕を組んだまま地図を見つめていた。

そして小さく息を吐く。


「ここまで伸びるとは……」


私は思わず苦笑する。予想以上ね。嬉しい誤算だわ。


しかし、その直後、別の考えが頭をよぎる。


金は掛かるけど……思い切って、もっと候補者を立てるべきだったかしら?


今回立候補したのは二十人。


資金。人材。時間。


すべてを考えて決めた人数だった。

けれど今、接戦区で支持が伸びているのを見ると、候補者さえいれば戦えた選挙区もあったかもしれない。


私は静かに呟く。


「少し慎重すぎたかな……」


ヘルムが聞き返す。


「どうした?」


私は地図を指差した。


「ここも、ここも、候補者がいれば、勝負になったかもしれません」


ヘルムはしばらく考え込んだ。

そして笑う。


「結果論だ。最初から全部は無理だ。人も金も足りなかった」


私は頷いた。


「そうですね。でも次は違います。次の選挙では、もっと多くの人を送り出したい」


ヘルムは満足そうに笑った。


「その意気だ」


その頃。


既存政党本部では、緊急会議が開かれていた。

机の上には速報の電報が山積みになっている。


「また逆転だと?」


「どうなっている!」


「炭鉱もか!」


「港まで!」


怒号が飛び交う。

一人の議員が頭を抱えた。


「地方でここまで負けるとは……」


別の議員が新聞を机へ叩きつける。


「演説だけの党だと思っていた!」


年配の幹部が重々しく口を開く。


「違う。地方を歩いた。現場を見た。それが票になった」


部屋は静まり返る。

誰も反論できない。


もう誰も、シュタール労働者党を「子どもの遊び」と笑う者はいなかった。


再び党本部。通信係がまた叫ぶ。


「速報!」


全員が振り向く。

私は紅茶を置き、静かに立ち上がる。

夜明けまでは、まだ少し時間がある。


しかし共和国の政治地図は、この長い一夜で、大きく塗り替えられようとしていた。

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