朝の飛行場
翌朝。
まだ朝日が昇ったばかりの時間だった。
私は早起きをして、ザンフトと一緒に屋敷を出る。
「お姉様。本当に飛行機を見に行っていいんですか?」
私は微笑んだ。
「もちろん。でも今日は中を見るだけよ」
「はい!」
二人で飛行場へ向かう。
昨日着陸した飛行機は、朝日に照らされながら静かに翼を休めていた。
近くまで行くと、その大きさに改めて驚かされる。
ザンフトは口をぽかんと開けた。
「大きい……近くで見ると、もっと大きいですね!」
私は笑う。
「私も初めて見た時は同じことを思ったわ」
梯子を上がり、機内へ入る。
座席。操縦席。無線機。計器類。
ザンフトは目を輝かせながら、あちらこちらを見て回る。
「わぁ……」
「これが操縦席ですか」
「このレバーは何でしょう?」
「窓もいっぱいあります!」
私はその様子を見ながら微笑む。
昨日まで選挙のことばかり考えていたけれど、こうして家族と過ごす時間も悪くない。
ザンフトは機内を歩き回りながら、何やら一人で頷いている。
「うむうむ……なるほど……」
私は思わず吹き出した。
「何を考えてるの?」
ザンフトは少し照れながら笑う。
「秘密です!」
「もう」
私は肩をすくめた。
「さあ、戻りましょう」
「はい!」
飛行機を降りると、ザンフトは満面の笑みだった。
「凄かったです!」
私は頷く。
「私も初めて乗った時、そう思ったわ。でもね。中は凄い音がしたのよ?」
ザンフトは目を丸くする。
「そうなんだ!」
「耳を塞ぎたくなるくらいだったわ」
「じゃあ、今度乗る時は覚悟します!」
その言葉に二人で笑った。
屋敷へ戻る途中。
父が庭を歩いていた。
「おー早起きだな」
私は軽く一礼する。
「お父様。ザンフトに飛行機の中を見せてきました」
父は満足そうに頷く。
「そうか。中々見られるものじゃないからな」
ザンフトも嬉しそうに話し始める。
「お父様!操縦席も見ました!飛行機って凄いですね!」
父は笑顔で頭を撫でる。
「いつか、お前も乗れるといいな」
その時、後ろから足音が聞こえた。
ヘルムだった。
荷物を確認しながら近付いてくる。
「楽しんでるところ悪いがそろそろ帰宅準備だ」
私は少し名残惜しく空を見上げる。
「もうそんな時間ですか」
ヘルムは頷いた。
「ああ、今日も予定はぎっしりだ」
私は父と母、そしてザンフトを見る。
「それじゃあ、行ってきます」
ザンフトは少し寂しそうだったが、すぐに笑顔を見せた。
「はい!次も飛行機のお話を聞かせてください!」
私は微笑みながら頷く。
「約束よ」
朝日に照らされた飛行機は、静かに出発の時を待っていた。
束の間の穏やかな朝は終わり、再び選挙という戦いの日々が始まろうとしていた。




