久しぶりの我が家
遊説を終えたその日の夕方。
久しぶりに我が家へ戻ることができた。
選挙のこと。政治のこと。党のこと。
今日は全部後回し。父が笑いながら言う。
「さーて小難しい政治の話は後回しだ!今日は、ささやかながら我が家で歓迎会だ!」
屋敷の食堂には温かな料理が並び、久しぶりに家族全員が揃っていた。
その瞬間。
「お姉様ー!」
元気いっぱいの声と共に、ザンフトが走ってくる。私は思わずしゃがみ込み、そのまま抱きしめた。
「ただいま」
ザンフトは目を輝かせている。
「飛行機って初めて見ました!楽しかったですか?」
私は笑顔で頷いた。
「楽しかったわよ!いつの日か、一緒に乗りましょうね」
「本当ですか!」
「約束よ」
ザンフトは満面の笑みで頷いた。
私は母の方へ歩く。
「お母様。ただいま」
母は優しく微笑んだ。
「お帰りなさい。元気そうで安心しました」
そして皆へ声を掛ける。
「さあ皆さん。どうぞ、お席へ」
食卓には穏やかな空気が流れていた。
父は終始ご機嫌だった。
グラスを片手に私を見る。
「飛行機は凄いだろ?」
私は笑顔で答える。
「はい」
「移動も速くて、とても便利でした」
父は満足そうに何度も頷く。
「うん、うん。そうだろう」
そして何気ない口調で続けた。
「それで?戦車はどうだった?」
食卓が静まり返る。
私。ヘルム。ライン。ヴィル。
四人のナイフとフォークが同時に止まった。
「……え?」
父は不思議そうな顔をする。
「足は遅いが、安全だっただろ?」
私は乾いた笑みを浮かべる。
「え、ええ……中々でしたよ」
ヘルムは静かに天井を見上げた。
やっぱり本気だったのか……
父は満足そうに頷く。
「そうだろう!それと拳銃の腕前は上がったか?」
再び食卓が止まる。
私は苦笑するしかない。
「いえいえ。まだまだです」
父は腕を組む。
「そうか……小型のPPKでも最初は難しいからな。そのうち慣れるだろう」
私は曖昧に笑うしかなかった。
「は、はい……」
食卓の反対側では、ライン。ヴィル。ヘルム。
三人とも固まっていた。
ヘルムが小さな声で呟く。
「おい……本気で戦車に乗せるつもりだったのか」
ヴィルも苦笑する。
「どうやら、そのようですね」
ラインは遠い目をしている。
「拳銃まで……普通、娘に教えますか?」
ヘルムは真顔で答えた。
「普通は教えねぇ」
少し考えてから続ける。
「……いや。世の中には、ごくごく稀にいるかもしれん」
三人の視線が一斉にグラウベへ向く。
父は何事もないように食事を続けていた。
私は思わず笑ってしまう。
「皆さん、もう慣れてください」
ヘルムは肩をすくめた。
「無理だ!親バカにも程がある」
食堂には笑い声が広がる。
政治も。選挙も。共和国の未来も大切だ。
けれど今だけは、久しぶりに家族と過ごす、何気ない時間を私は心から楽しんでいた。




