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【番外編追加】国宝級天才の最愛 〜四葉を手放せない若き侯爵は、恋の進め方だけが分からない  作者: 有原 詩名美


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第8話 噂燃え上がる

「はぁぁぁぁぁぁ」

王女は、執務室の机に突っ伏して盛大にため息をついた。


「父上も兄上もすごいのね。本当に人の心というのは掴めないわ…。私、王位を継ぐ立場じゃなくて良かった。とてもじゃないけど、人の上には立てないもの」

涙声で、愚痴を吐く王女。

「ですから、いつも言っておりますでしょう。短慮すぎると。周りを観察してから行動なさいまし!殿下の行動力は素晴らしいのですが、いささか勢いに任せすぎなところがございます」

それを見て、侍女長はため息交じりに返した。

「そんな事ないわ。私、ちゃんと考えたのよ?」

「…はい」

「二人が仲良しだと分かれば解決すると思ったの…」

「……はい」

「それがなんで、あんな話になるのよ!!」


噂は終息するどころか、新たな燃料を得て

――むしろ爆発していた。


同じ頃、監査室では。  

トリフォニアは、机に突っ伏して頭を抱えていた。


その様子を、遠巻きに見ている同僚達。

「殿下とトリフォニアのお茶会…あれって、中央庭園での対決だったのか?」

「見るものを震え上がらせる、女同士の激しい戦いだったらしいぞ…最終的に、閣下が血相を変えて止めに飛び込んだって話だな」

「でも、トリフォニアが今のとこ優勢だと聞いた」

カイルとデニスがひそひそ話す。

「バカ言わないの!」

ジョアンナは突っ込む。


トリフォニアは、もはや突っ込む気力すらなく他人事のようにその話を聞いていた。


お茶会での会話を思い起こす。

ルクセインがやって来て、少し話をした。


「殿下…何故こちらにニアを招いているのです?」

「あら、ルクセイン視察はもう終わったの?」

「ええ、予定より早く。そして質問に答えて下さい」

「仲良くなりたいと思っただけよ。ほら、貴方に教えてもらったお菓子も用意したの」

トリフォニアが好きなお菓子がテーブルに並んでるのを見て、ルクセインが頬を緩ませた。

「ニアは昔から甘い物好きだからな。とくに、この店の」

そう言ってさり気なく、トリフォニアの前へ菓子皿を寄せる。

「……ありがとう」

「殿下に遠慮するなよ。好きだろう?」

そのやり取りに、王女は面白そうに目を細めた。

「ニア…緊張してるな?」

ルクセインが、顔を寄せのぞき込む。

近い!幼馴染の距離感が残ったままだと慌てて引く。

そして、そっとトリフォニアの肩に触れると

「殿下なんだから、緊張しなくていいんだぞ」

そう言って笑った。

「殿下の前で、緊張するのは当たり前です!」

慌てて返した。

王女は、ますます面白そうな顔をした。


それだけだ。

そして、お茶会は穏やかに終わった。


終わった、はずだった。


それなのに翌朝、噂は思いもしない内容で駆け巡っていた。


白昼堂々の、正妻と愛人の一騎打ち。

両者一歩も引かず、笑顔で腹の探りあい。

視察を慌ててきり上げたルクセインが飛び込み、二人の仲裁をした…。

しかし、ルクセインはすでに愛人にご執心のようで、王女の目の前だというのに、愛人の肩を抱き寄せて耳元で愛を囁いていた。


何をどう見たら、そんな噂が立つのか。


おかげで、今日は監査室から出たくない、いや出られない。


――王女殿下の誤解を解けば、全て解決する

そう、信じて疑わ無かった。お茶会さえ無事に終われば、いつもの生活に戻れるものと信じていたのに…。

なのに…。


「トリフォニア…」

カイルが気の毒そうに、微動だにしないトリフォニアに声をかける。

「気にするなって」

「そうよ。噂なんてそのうち消えるわ。暫くの辛抱よ。」

ジョアンナも慰める。

トリフォニアはゆっくり顔を上げた。

「……噂は勝手には消えません」

「え?」

「むしろ、このままでは悪化します。私、分かったんです」

真顔で言う。

「問題は私に相手がいないことなんです」

監査室が静まる。

「……は?」

「閣下と王女殿下のお邪魔虫だと思われているの、私が独り身だから誤解されるんです」

「いや、そういう問題か?」

「そういう問題です!」

トリフォニアは机を叩いた。

「相手がいれば解決します!!」

そして、立ち上がり宣言した。


「私!婚活します!!」


「ええっ??」


「えーーーーーー?!」


一瞬の静寂が落ちる。

「……いや、待て。理屈は滅茶苦茶だが…」

最初に口を開いたのはデニスだった。

「だよな!?話が一足飛びすぎるだろ!」

カイルが慌てて止めに入る。

「だが、結果的に噂対策としては有効かもしれん」

「え!?有効なのか!?」

黙っていたジョアンナも、

「そうね。 過去の恋を忘れるには新しい恋よ!上書きよ!よし、私の人脈で他部署の優良物件をリストアップするわ!あ!カイル貴方、騎士団に友達いるでしょ?」

「あ、ああ。」

「そっちにも声かけて。遊び人はダメよ。まじめな独身騎士様紹介してちょうだい。あ、室長もルイスもよ」

ジョアンナはテキパキとカイルや他の同僚達にも指示を出す。

「…よし、わかった」

カイルは勢いよく膝を打った。

「お前は真面目で可愛いんだ、すぐに良い男が見つかるさ。今日の変な噂なんて、新しい恋人のノロケ話で吹き飛ばしてやれ!」


「ありがとうございます、皆さん…!」


こうして、監査室が総力を挙げて挑む【トリフォニアお見合い大作戦】が幕を開けた。

ただし、思い通りに事が運ばないのが王宮という魔窟である。


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