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【番外編追加】国宝級天才の最愛 〜四葉を手放せない若き侯爵は、恋の進め方だけが分からない  作者: 有原 詩名美


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第4話 王宮交流会にて

【気軽な交流会です】

開催案内にはそう書かれていた。


王宮では、働く者たちを労うために、年に数度交流会が開かれる。貴族たちが着飾る正式な夜会とは違い、堅苦しい挨拶も身分順の席次もない。立食形式で美味しい料理を囲みながら、部署の垣根を越えて親睦を深めるためのものと聞いた。


とはいえ、王族や高位貴族が顔を出す時点で、気軽とは何なのかトリフォニアは考えた。

少なくとも、今朝から何を着ていくかで侍女たちが大騒ぎしている光景を見て、気軽な集まりだと思う者はいないだろう。


トリフォニアも貴族令嬢の端くれだ。それなりの格好で交流会に挑む。もしかすると良い出会いがあるかもしれない。そんな淡い期待も抱いていた。同僚たちと一緒に、会場に入りお喋りや料理に舌鼓を打ち楽しんでいた時だった。


王女とルクセインが連れ立って現れた。

二人が立つと、そのオーラに誰もが目を奪われる。

王女は扇で口元を隠しながら、何かをルクセインに囁いている。ルクセインは赤くなったり、眉をひそめたりと、珍しく表情を忙しなく変えている。

正式な場ではないからか、それともルクセインと一緒にいるからか、王女の表情がいつもより柔らかく見える。


そんな二人の仲の良い様子を周りの人々は、温かい目で見守っている。

「本当に、お似合いよね」

「ご婚約の発表ってまだなのかしら」


トリフォニアは二人から視線を外し、同僚たちの輪へ意識を戻した。職場仲間たちの話題は専ら、カイルの生まれたての子供の事だ。

愛妻家と親バカぶりが隠せないカイルは、赤ちゃんを抱く妻が聖母のようだったとか、子供が可愛すぎてなど延々と惚気ている。それに乗って、先輩たちが子育ての話に花を咲かせている。

視界の端では、王女とルクセインが身を寄せ合い、楽しそうに言葉を交わしている。

その姿に、胸がほんの少しだけざわついた。

誤魔化す為に、ワインを流しこんだ。

「おいおい、そんなペースで飲んだら倒れるぞ」

カイルにたしなめられたが、知ったことか。


周囲がざわめいた。

見ると王女が、トリフォニア達の輪に向かって進んでくる。皆、慌てて頭を下げる。


「貴女が、トリフォニア・フェリシアね」

王女からの突然の声かけに、心臓が跳ねる。

「ああ、いいんだ。今日はそういのうは止めて。頭をあげて」

恐る恐る、トリフォニアは顔を上げた。

「そんなに固くならないで。今日は交流会でしょう?」

王女は困ったように笑う。

「優秀だと聞いている。報告書の間違いに気づいたとか。」

「いえ、その…偶然です。たまたま数字の違和感に気づいただけで…優秀などでは…」

「その"たまたま"が出来る人は少ないのよ。優秀な人は皆そう言うわ」

王女が柔らかく笑う。

「いえ、私一人の功績ではありません。周囲の方々にも助けられていますので」

そう言うトリフォニアをしげしげと眺めたあと、ポツリと呟いた。

「なるほど。ルクセインが放っておけない訳ね」


(…ん?ルークは何を気にしてるんだろ?)

トリフォニアは、王女の呟きの意味を考える。


「殿下!!」

思考の途中で、ルクセインの声が飛び込んできた。

慌てて、こちらに駆け寄ってくる。

「…ふっ!ルクセインなんだその顔はっ」

王女が弾けた様に笑う。


ルクセインは、王女とトリフォニアの間に立った。

「殿下、何を話していたんですか!」

王女は、悪戯を思いついた子供のように笑った。

「大した事ではない。お前から聞いた話を少し、ね」

「なっ…!!」

ルクセインが目を見開く

「ニア!何を聞かされた!」

突然詰め寄られ、トリフォニアは目を瞬かせた。


その光景に周囲がざわついた。


「え、あれは誰?」

「監査室の…」

「ニアってトリフォニア嬢のことよね?愛称!?」

「閣下と、近い仲なのか!?」

ザワザワと話が広がっていく。


王女は満足そうに笑った。

「安心して。だから、大した話はしていないのよ」

「殿下、その顔で言われても全く信用できません」

「失礼ね」

そう言いながらも、王女は楽しそうに踵を返した。

「では私は失礼するわ。後は本人同士で話しなさい」

「殿下!」


ルクセインの制止も聞かず、王女は軽やかにその場を去っていく。


王女が去った後も、会場の空気は妙にざわついていた。


「今の聞いた?」

「本人同士って……何を?」

「閣下とトリフォニア嬢が?」

「いや、でも王女殿下が……」

囁き声があちこちから聞こえてくる。


ルクセインは、王女を追いかけようとして立ち止まった。

「ニア」

呼ばれて視線を合わせる。

「速すぎる」

「え?」

「ワインのペースが速すぎる。三杯目だろ」

「…は?」

「ほどほどにしとけ」

そう言い残し、ルクセインは王女を追って行った。


(…なんで知ってるの!?)


トリフォニアの驚きとともに、周囲のざわめきも増す。


この時のトリフォニアは、まだは知らない。

翌朝、自分が王宮の噂話の中心にいる事を。


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