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【番外編追加】国宝級天才の最愛 〜四葉を手放せない若き侯爵は、恋の進め方だけが分からない  作者: 有原 詩名美


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【番外編】ルクセイン少年16歳の夏

★ランクインしました!ありがとうございます★


大衆受けはしないお話なんだろうな…と日々の閲覧数を見て思っていました。


それが、まさか完結当日にランクインするなんて!

平日にもかかわらず、予想を超えるたくさんの女神様にご降臨いただき、心臓止まりそうになりました!


本当に、ありがとうございます!!嬉しくて思わず番外編追加しました♪



「おい!あの花園女学院のご令嬢たちが来るんだぞ!?本当に行かないのか?」


誘いを断ると学友達が驚いてそう言った。


「ああ、俺に出会いは必要ないからな。楽しんできて。じゃあな、俺は図書室行くわ」

そう言うと、颯爽とルクセインは去っていった。


その背中を見ながら、学友二人はひそひそ話していた。

「あの才色兼美な令嬢が集まる、花園女学院との会食の誘いだぞ。お近づきになりたいと思うのは、一般男子の総意じゃないのか……?」

「……あいつ(ルクセイン)ほんと、女の子に興味ないよな。この前だって、街で見かけたアンジェラ嬢の話でみんな盛り上がってたのに、一人知らん顔だったぞ」


「………女の子に興味ないのか」


「なぁ…もしかして……男色?」


学友達は、その結論に顔を見合わせた。


ルクセインの通う学院は男子校だ。

年頃の男子が集まれば、話題は四六時中女子の話になる。

ルクセインだって、いっぱしの男の子だ。女子に色めき立つ学友たちの気持ちは痛いほどよくわかる。

――早くニアに会いたい。

その気持ちだけを励みに、学院生活を送っていた。

胸元のクローバーのしおりにそっと触れると、

半年前、帰省時のトリフォニアを思い出す。


トリフォニアは甘いお菓子や物語が大好きだ。ルクセインは街に出かけると、トリフォニアの好きそうな物ばかり目に入り休暇のお土産として購入する。

前回の帰省も、いつものように沢山のお土産を抱えて帰ったのだ。

喜ぶ顔を想像しながら―――


「ルーク久しぶり!」

いつもと変わらないトーンで応接間に飛び込んできたトリフォニア。


その姿に衝撃を受け、ルクセインは固まった。


ルクセインの変化に気付いてないトリフォニアは、久しぶりの再会に笑顔で近況を話していた。


ただ――


ルクセインには、トリフォニアの言葉が全く入って来なかった。


トリフォニアが余りにも……余りにも可愛くなっていたのだ。前から可愛かったのは事実だ。しかし、こんなに可愛かったか!?

前回会った時よりも、女性らしい身体つきに手入れされた長い髪。白くて柔らかそうな肌に、艷やかな唇、あと何かいい匂いもする。


ひまわりみたいな黄色いドレスと、トリフォニアの笑顔が重なれば――もう太陽のようだ。眩しい。


「………ルーク?」

はっと気がつけば、トリフォニアが少ししゅんとして、顔をのぞき込んでいた。

「ごめん…こんな話楽しくないかな」

寂しそうに言うトリフォニアに、慌てて否定する。

「違うよ!ごめんニア!ちょっと考え事してて!

そうだ!お土産!今回も沢山あるよ」 

落ち込むトリフォニアのフォローに、テーブルに並べたお菓子や本を指さす。


トリフォニアの顔色がパッと変わる。

「わ!この小説の新刊出てるのね!あ、こっちのお菓子かわいい」

「お菓子食べようか。お茶入れてもらうね」

ルクセインは、控えていたメイドにお茶の指示をする。

「このチョコレートおいしそう」

お茶が来るまで、待ちきれない様子のトリフォニアがかわいい。

「一粒、先に食べちゃいな」

ルクセインの言葉に笑顔で頷いたトリフォニアは、チョコレートを口に運ぶ。

「ん…美味しい」

幸せそうにチョコレートを頬張るトリフォニアを見ているだけで、ルクセインはもうお腹いっぱいだった。

「はい、ルークも」

気づけば、トリフォニアが一粒チョコレートを摘んでルクセインの口元に運んでいて、驚いた。

「……?はい、ルーク。あーんして?」

上目遣いに、そんなことを言うトリフォニアにルクセインは頭が真っ白になった。


なんとか意識を保って、口を開く。

チョコレートを投げ入れる時、少しだけトリフォニアの指が唇に触れる…。


「どう?美味しいでしょ?」

トリフォニアは、自分の手柄のように笑顔で言うがルクセインはそれどころではなかった。

「…う…うん」

口元を手で押さえて、なんとか返事をした。


「いらっしゃい!ニアちゃん!」

その時、お茶を持ったメイドと共に母親が入ってきた。母親とトリフォニアが話始めたことを確認すると、勉強があるからと席をたった。


自室に戻ったルクセインは、暫く動悸が収まらなかった。


――あれから更に半年たった。

トリフォニアに会うのは楽しみだが、あの時以上に可愛くなっていたらどうしよう…太陽は直視できない。


学友たちが、婚約者をデートに連れ出すための下見をすると言うので参観してみた。指南役はモテ男のアダムだ。


「えー勿体ない。断ったのかよ」


そう声を出したのは、本日の指南役でクラス一のモテ男アダム。

「当たり前だろ、付き合う気もないのにお茶になんて行けるかよ」

ルクセインは吐き捨てる。ついこの間、王立図書館で何度か顔を合わせるようになった令嬢に、二人でお茶をと誘われ断った。


「そこは、男ならいっとけよ!別に付き合う気なくてもいいんだし」

アダムのその言葉に、別の学友が反応する。

「アダムは自重した方がいいんじゃない?女の子取っ替え引っ替えだろ?領地に婚約者いるんだろ?」

「婚約者?」

アダムは、鼻で笑って続ける。

「親が勝手に決めた相手だぜ?どうせ結婚しなきゃならん相手に気を使ってどうするよ?楽しめる時に楽しむ。それに、色んな女の子で耐性つけとけば結婚後にも役立つだろ。女って色々面倒だぜ」

さすがモテ男は、言うことが違うと囃し立てる学友たち。

しかし、ルクセインには理解できなかった。

婚約者がいるのに、他の女に目移りする心境が。

トリフォニアはまだ婚約者ではない。しかし、ルクセインは彼女以外に目移りしたことも、他の女を知りたいとも思わない。トリフォニアを見て、彼女を理解できればそれで充分だ。


男子が揃ってやってきたのは、演劇場。最近流行りの演劇を勉強しようという話になった。

観劇後に、スマートに感想や劇中の知識を披露すると女の子の好感度が上がる、とはアダムの言葉だ。


実際に舞台を観終えたルクセインの感想は、正直なところ何故こんなものが流行っているのか?というものだった。


――政略結婚をした男爵夫人であるヒロインとその夫の夫婦仲は、冷え切っていた。

男爵夫人は、許されないと知りつつも下男に恋をする。やがて二人は思いを通わせるが、それが夫に知られるところとなり下男は監禁される。

夫は、下男を殺すつもりだ。

しかし、夫のその行動は妻への愛ゆえではなく、世間体のため。男爵夫人として義務を果たせというものだった。夫人は義務は果たすからと、下男の命乞いをするものの受け入れてもらえない。

愛の無い夫に服従するだけの人生ならば要らないと、監禁先から下男を救い出し、二人闇夜に消えてゆく…というお話だった。


それから数日後、長期休暇に入りルクセインは帰省した。もちろん、今回もトリフォニアに沢山のお土産を用意して。


トリフォニアの父、フェリシア伯爵が来ると聞いて当然トリフォニアも来ると思っていた。

しかし、彼女は来ずフェリシア伯爵に話があると改まって言われた。

ルクセイン、父、そしてフェリシア伯爵の3人で話は始まった。

最初は他愛のない、近況の確認だった。学院はどんなところだ?とか学友達と楽しく過ごせているか?などルクセインもそれに答えた。

暫く話していた時だ、

「ところで、ルクセイン君。君も16歳になった。そろそろ婚約を考えてもいい時期だと思うのだが…どうだろうか?うちのトリフォニアと」

フェリシア伯爵の不意の提案に、心臓が飛び出た。


――トリフォニアと婚約


もちろん!と口に出しかけた時に、ふとアダムの言葉が頭をかすめる

『親が決めた相手に気を使ってどうする』

そして、あの劇中のセリフ

『愛の無いあの人に縛られるくらいなら全部捨てるわ!』


「……婚約は」 


俺はまだ、トリフォニアの理想になっていない。


物語の王子様に憧れ、こんな人と結婚したいわと、うっとり語るその姿を見て、架空の王子に嫉妬した。

理想に近づくためと学院入学を決意させた、トリフォニアの理想の王子様。


「……今ニアと婚約したら」


捨てられてしまうのでは

愛されない男の、婚約の末路を想像する。

まだだ、今じゃない。


「だめです!婚約は考えられない」


今の俺では、きっと愛想をつかされてしまう!


ルクセインのその答えに、フェリシア伯爵とルクセインの父親は顔を見合わせた。そして、フェリシア伯爵が言った。


「わかった。残念だが、無理に婚約する必要はないんだ。ただ、トリフォニアとはこれからも変わらず、仲良くしてやってくれ」


「勿論です!」

時間は貰えた。トリフォニアの理想になって、男として見てもらえるように頑張ろう。

ルクセインはそう思った。


それから、ルクセインは今まで以上に勉学に励んだ。

トリフォニアの理想の姿になって、婚約したい。

その一心で。


勉学は、常に学年トップをキープ出来るようになった。しかし、剣術や体力面が足りてないと鍛錬を欠かさない日々だった。


とある日、剣術の実技試験があった。

トーナメント形式で、順番に打ち合いをする。

自分の番までの待ち時間に、学友たちのお喋りが聞こえてきた。


「え!例の令嬢射止めたのか!?でも、お前婚約者いたよな!?どうすんだよ!?」

「あちらも婚約者がいるんだ。国外留学中らしくてさ、期間限定のお互い割り切った関係さ」

少し悪ぶったセリフが聞こえる。

「なんだよ!大人の階段登りやがって!」

「近くに婚約者は居ないんだ、今のうちに自由にしなきゃな!」

学友たちは騒いでいる。


ルクセインは、眉間に皺を寄せる。

――相手を思う気持があれば、悲しませる行為はしないはず。例え離れていても…俺はニアを裏切らない。

でも…ニアは…?


「次!ルクセイン」

教官に呼ばれ前に出る。

試合相手と対峙する。


「始めっ!」

剣を振る。

先程の会話が、愛の無い婚約が頭の中を巡る。


―――人目を忍んで、2つの影が部屋に滑り込む。


『婚約者?』


トリフォニアは妖艶に笑うと、男の首筋に両手をかける


『王都にいるわ。でも、愛のない婚約よ。私が心から思っているのは、あなただけ……』


そう言うと二人の影が重なり―――


「うわぁぁぁぁぁぁ」 


対戦相手が、トリフォニアの架空の相手と重なる。

ルクセインは、想像の二人の影ごと切り捨てるように剣を振る。


(無理だ!無理だ!ダメだーーーニアーーー!!!) 


「そこまで!勝者ルクセイン!」


教官の声で現実に引き戻される。

座学ばかりと思われていたルクセインが、

剣術の実技試験で――1位を取った瞬間だった。


胸元の四葉のしおりを握りしめる。


待っていて、ニア。


俺は必ず君の理想を叶え、愛される相応しい男になってみせるから。


トリフォニアに愛の無い結婚はさせない。

そう決意した、ルクセイン16歳の夏だった。


ルクセイン少年の拗らせ純情一途の原点を、120%の濃度で書いてみました。

もっとカッコいいヒーローになるはずが…ごめんねルーク。母さん(作者)こんな風にしか君を書けないみたい…。

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